其の124『森家の話』 |
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時代 |
織豊の記憶 |
地域 |
安土 |
刀剣 |
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人間無骨 |
不動行光、此処には此レらしか居ない |
不動行光 |
……ひっく。なんだよ、話かけんな |
人間無骨 |
では、此レは独り言 |
不動行光 |
…… |
人間無骨 |
あの年の初夏、母御は兼山で五人の息子の帰りを待っていた |
人間無骨 |
信長公に同行し京に出向いていた蘭丸、坊丸、力丸からは、夏には休みをもらえるだろうと母御に手紙が届いていた |
人間無骨 |
信長公の算段では天下布武をもうすぐ成し遂げられるところまで来ていたから |
人間無骨 |
久しぶりに五人揃って兼山に、母御の元で過ごせる夏が来るはずだった |
不動行光 |
……なんだよそれ、伏線立ちまくりじゃんか |
人間無骨 |
今か今かと待ちわびる母御の元へ、本能寺が焼け落ちたとの知らせが届く。三人の息子から手紙を受け取った十日ほど後のことだった |
人間無骨 |
同じく本能寺の知らせを受け信濃から命からがら戻った相棒は、母御とともに咽び泣きこの世の理を嘆いた |
人間無骨 |
母御と、相棒はこう思っただロウ。……せめてもう一度、会いたかったと |
不動行光 |
……あーもう、はっきりと言えばいいだろ! どうせ俺は愛された分を主に返せやしなかったし、この世の理も……断ち切れない |
人間無骨 |
此レは、相棒の荒々しい戦いと共に語らレル槍。だが今ひと時は、相棒の心を届けル十字の穂先となロウ |
人間無骨 |
お前に、会いたかった |
不動行光 |
…………、………… |
不動行光 |
……俺は、ダメ刀……。……だけど、これを受け取らなかったらきっと、もっとダメに……なっちまうよな、蘭丸 |
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