其の157『太子の話』 |
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時代 |
江戸の記憶 |
地域 |
大阪(大阪冬の陣) |
刀剣 |
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丙子椒林剣 |
荒陵で、また人が死にますよ |
七星剣 |
全ては死へ還りゆく。今も、昔も、これからも |
丙子椒林剣 |
七星剣、卿の耳には届かないのか。人々の望みが |
七星剣 |
届いたとして、おれに何が出来るのか |
丙子椒林剣 |
人の望みを聞きそれを叶える救世観音は、この世を導く天子たる聖徳太子の…… |
七星剣 |
そうあろうとされていた。だが、あの方は人だ。遥か西方から知識を得て、この国を秩序ある国にしようと苦心した人 |
七星剣 |
政治闘争を戦い、改革を成し遂げ、病で死んだ、ただの人だ |
丙子椒林剣 |
……。卿と私は共に救世観音の下にあった。この場所で、それも、とても長い時間 |
丙子椒林剣 |
そして、今、またこうして出会った。けれど、今の卿と私は、あまりに違い過ぎる |
七星剣 |
星の巡りは変えられぬ |
丙子椒林剣 |
……私は、人々に心を寄せられ、救世観音となられた太子しか知らない |
丙子椒林剣 |
厩戸皇子と繋がる名と物語は、人の手によって付け加えられ、人の手によって剥がされた |
丙子椒林剣 |
だというのに、卿は、この場所で、私の目の前で、太子を否定する。よりにもよって、太子に似通うその姿で…… |
七星剣 |
…… |
丙子椒林剣 |
……これはただの八つ当たりだ。救世の手となり、菩薩心を持てという私こそが、この有様を受け入れられずにいる |
七星剣 |
……またここから知ることはできる。おれも、おまえも |
七星剣 |
宇宙と身の内は相対する。宇宙が変われば、見え方も在り様も変わる |
丙子椒林剣 |
ははっ! ……これ以上何に変われと |
七星剣 |
身の内とする星は己で選べる |
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