其の150『洞に地蔵』 |
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時代 |
武家の記憶 |
地域 |
厚樫山(阿津賀志山の戦い) |
刀剣 |
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大慶直胤 |
むぎゅー……、踏み出した途端、洞に落ちるなんて……。でも、助かったー |
地蔵行平 |
そなたは、もっと周りを見ながら歩いた方がよい |
大慶直胤 |
周りを見ながら歩いていたから、穴に落ちたんだけど |
地蔵行平 |
……はあ、そなた、古今に似ているな |
大慶直胤 |
ええっ! それはまた、光栄なー |
地蔵行平 |
褒めてはいない |
大慶直胤 |
褒められて伸びる鋼なのにー |
地蔵行平 |
……刀剣も時代が下れば随分と俗世に塗れる |
大慶直胤 |
それを言うなら、鬼と蛇の時代の刀は偏屈だー。刀もろくに見せてくれないし |
地蔵行平 |
ああ言えば、こう言う。そんなに吾の刀が見たければ、後で見せてやろう |
大慶直胤 |
いいのー!? 後鳥羽院の御番鍛冶、豊後国行平の刀! やった! |
地蔵行平 |
だから、今はちゃんと前を向いて歩きなさい。古今といい、歌仙といい、この手のものはなぜすぐよそ見をするのか…… |
大慶直胤 |
…… |
地蔵行平 |
どうした? まだなにか |
大慶直胤 |
……ううん、地蔵菩薩の優しさがさ、なんだか沁みちゃってー…… |
地蔵行平 |
……まったく。人の時代の刀というものは |
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