其の151『鋼の先に』 |
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時代 |
維新の記憶 |
地域 |
函館 |
刀剣 |
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大慶直胤 |
おおー、甲鉄艦! |
笹貫 |
そんなにはしゃぐもんかな |
大慶直胤 |
あれは叡智の塊ー! 蒸気船で、鉄甲板で、カノン砲まで付いてるんだから |
笹貫 |
あれの前では、人間も刀も一溜りもない |
大慶直胤 |
んーと、薩摩の刀が言う? |
笹貫 |
はは、確かに |
大慶直胤 |
薩摩は九州の南端にあって幕府の目が届きにくいわ、密貿易で外国の技術を取り入れて倒幕の機会を伺っていたわで、あの力をいち早く引き込みはしたよ |
大慶直胤 |
でもまー、幕府側が外国の技術を持ってなくて薩摩に遅れを取っていたわけでもないし、それぞれに戦う力があった。それで、この戦争は北の大地に至ってるから |
大慶直胤 |
火砲を前にしても、薩摩の兵は勇ましく、鬼のような存在だったな |
笹貫 |
褒めてくれるねぇ |
笹貫 |
だけれど、いくら勇ましく鬼のような薩摩隼人であろうと火砲の前ではただの人間。その勇ましさを発揮することなく、機械的に排除されて死ぬ |
大慶直胤 |
刀工大慶直胤は、反射炉に希望を掛けたんだよね。この研究が国の為になるって |
大慶直胤 |
鋼は機械化の末にあんなにも強い武器になったんだ。大砲にも、軍艦にもなれた |
大慶直胤 |
でも、どれだけ機械化されようと鋼の行きつく形として、刀だけは人の手からしか生み出せない。……そう、揺らぎが必要なんだ |
大慶直胤 |
そして、俺たちは刀としてここに呼ばれた |
笹貫 |
機械化とは、往々にして人間性の排除を言う…… |
笹貫 |
この時代があの鋼を選んだ。だが、その先の時代でこうしてまた刀という鋼が選ばれた |
大慶直胤 |
え……、……ええっ!? なにそれ、賛美ー! |
大慶直胤 |
じゃあさ、その違いをしっかりと目に焼き付けないと。ちょっと近くまで行ってくるー! |
笹貫 |
刀は武器として逆行し、人間性を受容するための鋼となる…… |
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