其の146『ばっくすていじ』 |
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時代 |
指定なし |
地域 |
指定なし |
刀剣 |
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条件 |
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富田江 |
おもしろい作戦だ |
篭手切江 |
そうでしょうか? ただ真正面から敵を倒すだけの正攻法です。面白味には欠けるかと |
富田江 |
ああ、君の戦略のことだよ。皆、素直に乗せられているじゃないか |
篭手切江 |
…… |
篭手切江 |
富田せんぱいには敵いませんね。お見通しですか |
富田江 |
富田で構わない。稲葉もせんぱいなんて見上げられるより、同等に扱われたほうが気が楽なんじゃないかな |
篭手切江 |
いえ、せんぱいはせんぱいです。私は若輩者ですから |
富田江 |
では皆、その若輩者の手の内で踊らされているわけだ |
篭手切江 |
踊らせているつもりは! ……あ、踊っていただいてますね、はは。皆さん、とてもお優しいので |
富田江 |
それだけで、とは思えないけどね |
篭手切江 |
富田せんぱい。江とは如何なる刀だとお思いですか |
富田江 |
天下人豊臣秀吉に見出された天下三作の一角、郷義弘の作刀。御家の至宝、贈答として多くの大名に重んじられた。それこそ江の一振で国が買える程の価値で。私は前田家、君は細川家と稲葉家だったかな |
篭手切江 |
はい。その反面、私たちはこのようにも言われています |
篭手切江 |
江とお化けは見たことがない |
富田江 |
刀剣の見極めにおいて銘ほど重要なものはないけれど、江の多くは無銘。その価値は権威からの評価によってのみ成り立っている |
富田江 |
逆にいえば、権威に江と認められた刀だけが郷義弘の刀ということだね |
篭手切江 |
私たちは他者の目を通して初めて自己を得ることができる |
富田江 |
だからこそ、歌と踊り、かな |
篭手切江 |
……安直、でしょうか |
富田江 |
いいや。江の特性を捉え、よく活かしている |
富田江 |
ただそれは、劇薬かもしれない |
篭手切江 |
………… |
篭手切江 |
それでも、私は……。江を、もっと確かで強い存在に…… |
富田江 |
夢とは光。光とは天下に同じ、と言ったそうだね |
篭手切江 |
出過ぎた真似をしました。お恥ずかしい限りです |
富田江 |
光にも、天下にも、影が付き纏うよ |
富田江 |
なのに君はその手を伸ばした。……だが、ここは戦場だ。その考え方は間違いではないだろう |
篭手切江 |
……すみません。無理に言わせてしまいましたね |
富田江 |
それは過小評価さ。君は星を掴んでしまったのだから |
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