この記事は『葬送のフリーレン』の世界において、魔族側の「全知のシュラハト」と人間側の「南の勇者」は、共に強力な未来視の能力を持つ存在として描かれています。この二者の関係性、能力について、そして作品全体に与える影響について深く掘り下げて考察します。
この記事は『葬送のフリーレン』原作の単行本最新巻までのネタバレを含みます。
目次
全知のシュラハトとは?
出典: websunday.net
「全知のシュラハト」は、魔王の腹心として魔王軍に仕え、その中でも魔王直属の幹部である「七崩賢」をも束ねていた大魔族です。物語の本編時代では既に故人となっていますが、その影響は現代のフリーレンたちの旅にも及んでいます。
彼の外見は全身を覆う黒装束と口元を隠すマスクが特徴的です。フードを被った若い男性のような姿で、衣服には未来視の魔法を象徴する「目玉模様」の装飾が施されています。
魔王軍における彼の地位は明確には「No.2」とは言及されていませんが、七崩賢に対して指示を出せる立場であったことから、実質的に魔王に次ぐ最上位に近い存在であったと考えられます。
七崩賢との関係性においては、単なる主従関係を超えた繋がりが見て取れます。特に黄金郷のマハトとの会話シーンでは、対等な口調で話す様子が描かれていたり、死後にはソリテールから「友達」と称されるなど、魔族の間でも一目置かれた存在であったことが伺えます。
未来視の能力とその特性
「シュラハト」と「南の勇者」は、作中において未来を見通すという破格の能力を持つ者として登場します。シュラハトは「千年後の未来」まで見通すことが可能であったとされています。
予知能力のメカニズム
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シュラハト「私はもう数えきれないほど予知した未来の世界で南の勇者と戦ってきた。」
出典: 葬送のフリーレン 10巻 89話
と語り、無名の大魔族ソリテールも彼を「”未来を何万何億回と見てきたような存在”」と評しています。この描写は、彼らの予知が単一の確定した未来を見るものではなく、予知をするたびに未来が変わり得ることを示唆していると解釈できます。
つまり、未来視の能力者は自身の行動や意識を変えることで未来を書き換えることが可能であると推測されます。
このような能力を持つ者は、具体的な行動を起こす前に、頭の中で複数の未来パターンをシミュレーションし、望む結果に繋がる行動を選択できるという、非常に強力なメリットを有します。これは、因果関係を事前に把握し、歴史そのものを作り出すことに匹敵する能力と言えるでしょう。
南の勇者との激突と相討ちの真相
「全知のシュラハト」と「南の勇者」は、共に未来を見通す能力を持ちながら、最終的に相討ちとなる形で命を落としました。この二人の戦いは、単なる強者同士のぶつかり合い以上の意味を持つと考えられます。
未来視同士の戦い
未来視の能力が複数存在する場合、互いの予知と行動が干渉し合い、未来が常に変化するというパラドックスが発生します。一方が有利な未来を見て行動しようとすると、もう一方がそれを未来視して対抗策を講じ、未来を書き換える、という戦いになるはずです。
これにより、互いに未来視の予知を成功させないこと自体の戦いになり、膠着状態に陥る可能性がありました。
相討ちに至った動機
このような状況を回避するために、二人は「未来視の排除」という結論に至ったと考察されます。不毛な未来の奪い合いから脱却するためには、どちらか一方、あるいは両方の未来視の能力者が存在しなくなることが必要不可欠だったと考えられます。
シュラハトは南の勇者との戦いを、
シュラハト「これは魔族の存亡をかけた戦いであり、敗戦処理であり、千年後の魔族のための戦いだ。」
出典: 葬送のフリーレン 10巻 89話
と称しており、自身の死後の未来まで見据えてこの戦いに臨んだことが伺えます。これは、相手側に強力な未来視がなくなるために、未来が固定されることで、魔族にとってより良い未来が訪れることを願ったためと解釈できるでしょう。
また、シュラハトは自身の動きを監視していたフリーレンに気付き、
シュラハト「悪いなフリーレン。お前に南の勇者との戦いを見せる訳にはいかん。」
出典: 葬送のフリーレン 10巻 89話
と発言しています。これは、南の勇者が確立した魔族への対処法が後世に残されることと、シュラハトと七崩賢の魔法をフリーレンに見せるのを避けたかったためと推測されます。
南の勇者の圧倒的な実力
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南の勇者は、七崩賢を3人討ち取ったうえにシュラハトと相打ちとなったとされており、魔族側の七崩賢を全員集結させたシュラハトたちを相手に、圧倒的な戦闘能力を示しました。
その事実は、彼が「人類最強」と呼ばれるにふさわしい存在であったことを物語っています。シュラハトがマハトに協力を要請する場面でも、マハトはシュラハトの実力を認めつつも、その戦いの困難さを認識していた様子が描かれています。
シュラハトの生存説と正体に関する考察
シュラハトは南の勇者との相討ちで死亡したとされていますが、その死には未だ多くの謎が残されています。また、彼の正体についても様々な考察がなされています。
ゼーリエの発言と生存説
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第145話では、ゼーリエが敵の未来視について、
ゼーリエ「救いがあるとすれば、こちらの未来視が不完全であるように、あちらの未来視も完全ではなさそうだということだな。」
と推定する場面がありました。この発言は、ゼーリエが敵の未来視が完全である可能性を排除せずに検討した上で「完全ではなさそうだ」と結論付けていると解釈できます。
この「完全な未来視」を持つ存在としてシュラハトが挙げられることから、ゼーリエがシュラハトの生存、あるいは復活の可能性を考慮していると考えることも可能です。しかし、この前の描写として、「南の勇者」の後ろ姿が描かれていることからシュラハトよりも、南の勇者と比較しているようにも思えます。
魔族としての正体
シュラハトの正体は作中で明言されていませんが、大魔族ソリテールの研究結果から推測することができます。
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ソリテールは、マハトを含む人型の魔族が、元々は異なる種の魔物であり、人間を捕食することで人型の体を得た「人喰いの化け物」であるという真実を語っています。この研究結果を踏まえると、シュラハトもまた、かつて人型ではない魔物であったものが、人間を捕食し人型の魔族へと進化した存在である可能性が考えられます。
人型の魔族として、また魔王の腹心という高い地位に上り詰めるまでには、彼もまたマハトやソリテールと同様に、言葉や感情を持つことで生じる苦悩や苦痛を乗り越えてきた壮絶な過去を抱えていたと推測されます。
南の勇者との同一人物説
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「南の勇者とシュラハトは同一人物ではないか」という説も存在します。作中で二人が同時に描かれる場面がないことや、「奇跡のグラオザーム」の能力を使えば記憶操作やワープによる移動も可能であることから、そのように考察できます。
同一人物ではない可能性が高い
しかし、この説には矛盾点もあります。もし南の勇者が魔族であったなら、フリーレンが彼に会った際にその正体に気づいていたはずだし、シュラハトが人間であったなら、魔族側に見抜かれていた可能性が高いとも考えられます。
さらに、同一人物であると仮定した場合、両者を演じる動機やフリーレンに会った理由、魔王軍での行動の理由などが不明瞭になり、物語の目的が曖昧にもなってしまいます。ですので、作中のセリフを見る限り、同一人物説は考えにくいと判断しています。
シュラハトが残した謎と影響
ヒンメルたちを生かした理由
シュラハトの未来視は千年先まで見通せるとされていますが、いくつかの疑問も残されています。なぜ彼は魔王を倒すヒンメルたちの存在を事前に察知しながら、幼少期に始末しなかったのでしょうか。
考えられる可能性としては、ヒンメルたちが魔王を倒す未来は変えられないと悟っていた、あるいはそれよりも優先すべき魔族の未来があった、または魔族の未来においてヒンメルたちの存在が不可欠だった、などが挙げられます。
魔族の未来
シュラハトは「魔族の未来のため」に行動していましたが、彼が見ていた千年後の魔族の未来とはどのようなものだったのでしょうか。
南の勇者との戦いを「敗戦処理」と認識していたことから、魔王の敗北が確定していた未来を見ていた可能性が高いです。
彼は魔王亡き後の時代で、生き延びた七崩賢や他の魔族たちがフリーレンたち人間を倒し、「魔族だけの世界」を築き上げることを望んでいたのかもしれません。あるいは、ゼーリエ率いる一級魔法協会によって全ての魔族が滅ぼされてしまう未来を危惧し、自身の犠牲でその流れを変えようとした可能性も考えられます。
まとめ
全知のシュラハトは、『葬送のフリーレン』において、その「全知」の異名にふさわしい強力な未来予知能力を持つ魔王の腹心でした。彼は自らの行動で未来を書き換え、幾多の思考実験を重ねることで「魔族の未来」を確立しようとしました。
しかし、彼と同じ能力を持つ南の勇者の登場により、未来を巡るパラドックスが発生し、結果的に両者の相打ちという悲劇的な結末へと繋がったと推測されます。
その死後もなお、ゼーリエの言葉からその生存や復活の可能性が示唆され、またフリーレンの異名の由来にも関わるなど、物語の深層で重要な役割を担う存在であることが分かります。彼の行動と予知は、フリーレン世界の根幹を成すテーマの一つとして、今後の物語の展開に大きな影響を与えることでしょう。


















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