2020年6月19日にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から発売された「THE LAST OF US PART II」。
前作から5年後を舞台に、復讐を求めるエリーの無慈悲な旅を描きます。戦闘やステルスシーンなどのパワーアップを謳い、高い期待を集めてきました。
本記事では、海外メディアの評価を高評価と低評価に分けてまとめています。今回はあわせて、メディア評価とユーザー評価の乖離についても考察しました。
目次
メタスコア95点の評価
世界中のレビューを集めた「Metacritic」のスコアは95点と、かなり高いスコアになっています。(2020/6/22時点:レビュー数96件)
現時点で具体的にどのような点が評価されているのか、詳しく紹介します。
評価の高い点
ヘビー、しかし引き込まれるストーリー
一般的な作品において、プレイヤーが操作する主人公は正義として振る舞います。しかし「THE LAST OF US PART II」のストーリーを進めるにつれ、「何が正義で何が悪か」の境目は曖昧になっていきます。
非常に重たいストーリーではあるものの、グラフィックやサウンド、ストーリーテリングなどの演出が秀逸で、プレイヤーを作品に引き込んでいく魅力が高く評価されました。
「The Sydney Morning Herald」は、「最先端のテクノロジーとシルクのような大予算のデザインを、優れた映画と文学のストーリーテリングと融合させ、息をのむような結果をもたらす特異なゲーム」として、100点をつけています。
ストーリーに重みをもたせるアクション
さまざまなアクションを追加したこと、「敵」の振る舞いの生々しさにより、プレイヤーの没入感をさらに高めているのも、本作を語る上で欠かすことができないポイントです。
ストーリーとアクションがそれぞれ独立したものではなく、リアルな生死をプレイヤーにも突きつけてくる重たさは、なかなか体験できるものではありません。
「PlayStation LifeStyle」は、「ビデオゲームにしかできない新しい視点とユニークなストーリーテリング方法を通じて、ストーリーの中心にいるヒーローの考えを再文脈化する」として、100点をつけています。
評価の低い点
前作ほど感情移入できない
主人公が父親的存在だったジョエルから娘のエリーに変わった「THE LAST OF US PART II」。「女性はか弱く守られるべき存在」という考え方からの転換が見られる、昨今のゲーム作品の流れに沿った変化と言えるでしょう。
その変化を好意的に受け入れるメディアが圧倒的多数を占めてはいるものの、一方で前作のジョエルほど感情移入することができないとする声もありました。
「IGN JAPAN」は、「エリーを主人公にしたことによる紋切り型で展開されるストーリーは、前作の出来栄えからは遠く及ばない。」として、70点をつけています。
メディア評価とユーザー評価に大きな乖離
ユーザースコアは3.8の低評価
「THE LAST OF US PART II」の評価において特徴的なのが、メディア評価とユーザー評価の乖離です。
冒頭で紹介したメタスコア(メディア評価)が95点という驚異的な高得点を獲得する一方で、ユーザースコアは3.8(10点満点)となっており、ここまで評価が異なるのは大変珍しいことです。
海外メディアは大作にも容赦のない評価を下すことがありますので、ゲーム会社に遠慮して高い点数をつけているとは考えづらいでしょう。
ユーザーのコメントを分析すると、ストーリーに対して多くの批判が寄せられています。特に多いのが、「あまりに暴力的すぎる」「エリーに感情移入できない」といった意見です。
ジョエルへの思い入れの強さゆえ?
ゲームメディアの中で評価にばらつきがあるなら、個々の考え方の違いということでまだ理解できます。しかしゲームメディアと一般ユーザーでここまではっきり評価が分かれるとなると、それ以外の理由がありそうです。
評価が分かれた可能性としては、一つのゲームに対する思い入れの違いがあるのかもしれません。多くのゲームをプレイすることを仕事としているゲームメディアのレビュワーに対し、一般ユーザーがプレイするゲーム作品は、それと比べると限られています。
必然的に、ひとつひとつの作品に対する思いは強くなります。今作を購入したユーザーの多くは、前作の主人公であるジョエルに強く感情移入した人が多いのではないでしょうか。
そうしてプレイした本作において、その感情を切り替えるための仕掛けが序盤で十分に用意されなかったことに戸惑い、そのような心境のままリアリティの増した暴力表現を見せられたことが、低評価につながってしまったのかもしれません。
もちろん、本作を高く評価したユーザーもいますし、低く評価したメディアもあります。どちらが正しいという話ではなく、それぞれの感覚を尊重することが大切なのでしょう。
評価まとめ
「THE LAST OF US PART II」は、PS4史上最高の作品の一つと評価するメディアも出るほど、高いメタスコアを獲得しました。
ストーリーテリング、グラフィック、アクションなど、エリーの復讐を描くために工夫しつくされたすべての要素が、この評価につながっているのでしょう。
ユーザー評価と異例の乖離を見せたことも相まって、2020年に最も注目される作品のひとつになったことは間違いありません。
メディアからの評価は異様に高かったみたいだけど、ユーザーからの評価が散々じゃあ結局ゲームとしてはこれ以上無いぐらいの失敗作だなあ