『鬼滅の刃』に登場する上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)は、鬼舞辻󠄀無惨に次ぐ実力を持つ、十二鬼月最強の鬼です。その圧倒的な強さは、発足以来一度も上弦の壱の座を譲ることがなかったことからも明らかです。
本記事では、そんな黒死牟の正体や血鬼術、そして鬼になった悲劇的な過去と最期まで、徹底的に解説します。
本記事には、「鬼滅の刃・20巻」までのネタバレを含みます。ご注意ください。
黒死牟の正体は「始まりの剣士」の双子の兄
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鬼でありながら鬼殺隊の呼吸法を使う黒死牟の正体は、戦国時代に鬼狩りをしていた継国厳勝(つぎくに みちかつ)です。黒死牟は、全ての呼吸の基礎である「日の呼吸」の使い手で、鬼殺隊の起源とも言える「始まりの剣士」継国縁壱(つぎくに よりいち)の双子の兄でした。
厳勝はもともと、鬼を倒す剣士でしたが、ある理由から鬼となり、無惨の配下として最強の鬼「黒死牟」へと変貌しました。
継国家族構成
継国家は、戦国時代に武家でした。
- 父親: 名前は不明。妻を深く愛していましたが、双子の弟である縁壱に不吉とされる痣があったため、縁壱を不当に扱いました。35歳で亡くなりました。
- 母親・朱乃: 人形のように物静かで、家族を大切にする人でした。歌と笛を特技としていましたが、24歳という若さで病に倒れました。
- 長男・巌勝(後の黒死牟): 才能に満ちた弟・縁壱に強い劣等感を抱き、鬼となりました。厳勝の名前は、強く、いつも勝ち続けられるように願い、父親が名付けました。
- 次男・縁壱: 生まれつき並外れた才能を持ち、透き通る世界が見える特異体質でした。縁壱の名前は人と人との繋がりを何より大切にという願いを込めて、母親が名付けました。
黒死牟は炭治郎の父親?
黒死牟(継国巌勝)は竈門炭治郎の父親ではありません。炭治郎の家系にも直接の血縁関係はありません。
しかし、継国縁壱とは血縁関係がないものの、炭治郎の祖先・炭吉とは友人関係にありました。竈門炭吉は、縁壱から「日の呼吸」の剣技と耳飾りを託されました。炭吉は、その技を神事の舞「ヒノカミ神楽」として形を変え、竈門家に代々受け継いだことで、後の炭治郎に日の呼吸の力を継承させることとなりました。
父親・炭十郎が似ている理由
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炭十郎は、黒死牟ではなく、双子の弟である縁壱に似ています。
縁壱の「日の呼吸」と「生き様」という想いを、竈門家が炭吉から正確に受け継いできた結果、その継承の重みが子孫である炭十郎の姿に外見的な類似として現れたのです。
双子の兄である黒死牟が弟の縁壱を裏切り鬼になった一方で、血の繋がりのない竈門家が、縁壱の「日の呼吸」と無惨を討つという「意志」を正しく受け継ぎました。
黒死牟の人間時代
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元々人間だった黒死牟の過去について解説します。
継国厳勝(黒死牟)の幼少期
継国巌勝(後の黒死牟)は、双子の兄として生まれ、家を継ぐ者として大切に育てられました。しかし、7歳で弟の縁壱が剣の天才だと知ると、深い劣等感に苦しみます。
厳勝が自身の立場を案じていたところ、お母様が亡くなられたと縁壱から知らせがありました。縁壱は自分が跡継ぎにされると考え、厳勝に別れの挨拶をして家を出ていき、消息を絶ち、二人は離れ離れになりました。
当時、双子は、跡目争いの原因になるため、不吉とされていました。弟の縁壱は生まれつき不気味な痣が額にあったことから、父親は、縁壱を殺そうとしましたが、朱乃が激怒したため、縁壱は、十歳になったら、寺に行かせ、出家させることに決まっていました。
縁壱との再会
それから十年余りの月日が経ち、鬼に襲われた厳勝を救ったのは、縁壱でした。
再会した縁壱は、幼少期をはるかに上回る剣技を身につけており、その人格もまた非の打ち所がないほどに高潔でした。厳勝は、縁壱のその圧倒的な力を自らのものにしたいと強く願い、家も家族も捨て、鬼狩りの道へ進むことを決意いたしました。
月の呼吸の習得と才能の限界
鬼狩りとなった巌勝は、縁壱と同じ「日の呼吸」を習得することはできませんでしたが、独自の「月の呼吸」を習得し、縁壱と同じように額に痣も出現しました。彼の努力は並外れたものでしたが、それでも縁壱には及ばず、その才能の限界を悟ります。
縁壱は、分け隔てなく誰にでも剣技や呼吸法を教えましたが、縁壱と同じ境地に達する者は誰一人として現れませんでした。
そこで縁壱は、それぞれの才能や特性に合わせて呼吸法を指導しました。その結果、「日の呼吸」から派生した様々な呼吸法が生まれ、痣が発現する者も増えていきました。
鬼になった理由
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妻と子供を捨ててまで、鬼狩りになったにもかかわらず、なぜ、鬼になったのでしょうか。
黒死牟が鬼になった理由を解説します。
25歳の壁と無惨の誘い
痣が発言した厳勝は、己の技を極めるための時間が残されていないと悟ります。そんな時、鬼舞辻󠄀無惨から鬼になるよう誘いを受けました。
技を極めたいという一心から、厳勝は無惨の誘いを受け入れ、鬼となったのです。
痣が発現した者は、25歳を迎える前に命を落とすとされていました。
痣は強大な力を与えますが、寿命を前借りするもので同時に大きな代償を伴います。
鬼になっても果たせなかった夢
鬼になってから六十年後、黒死牟は縁壱と再会します。25歳で命を落とすはずの縁壱が、老いた姿で目の前に現れたのです。その体は老い衰えていても、剣技は全盛期と変わらず、黒死牟は一太刀で首を斬り落とされてしまいます。
もう一撃で止めを刺されると思いましたが、縁壱は黒死牟に与えた一撃が最後の力だったかのように、立ったまま静かに息を引き取ります。永遠の命を手に入れてもなお、縁壱に打ち勝つことは決して叶わないのだと、黒死牟は悟ったのでした。
無限城での戦い
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霞柱・時透無一郎との遭遇
無限城で、黒死牟は霞柱・時透無一郎と遭遇します。玉壺を単独で倒した実力を持つ無一郎でさえ、黒死牟の放つ圧倒的な重圧に恐怖で体がすくんでしまいました。黒死牟は、無一郎の姿を一目見て、無一郎が自分の子孫であることを即座に察知します。黒死牟は無一郎の才能を称賛し、鬼になるよう持ちかけますが、拒絶されます。
最後の激闘
黒死牟との戦いには、まず霞柱・時透無一郎が立ち向かい、その後、風柱・不死川実弥、その弟の不死川玄弥、そして岩柱・悲鳴嶼行冥が加わり、壮絶な総力戦となりました。
死の間際に、無一郎は強い意志で日輪刀を赫刀化(かくとうか)させて黒死牟の肉体を貫きました。赫刀は鬼の再生能力を一時的に阻害する効果があり、黒死牟に決定的なダメージを与えます。
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同時に、玄弥は黒死牟の肉片(刀の破片)を食べるという捨て身の行動で鬼の力を得て、木の根のような血鬼術による拘束を発生させ、黒死牟の全身の動きを完全に封じました。さらに、実弥の「稀血(まれち)」が黒死牟の嗅覚を刺激し、一時的に酩酊状態に陥らせて動きを鈍らせる効果もありました。
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無一郎の赫刀と玄弥の拘束によって生まれた決定的な好機を逃さず、悲鳴嶼と実弥が協力して黒死牟の首を斬り落としました。この戦いは鬼殺隊の勝利に終わりましたが、無一郎と玄弥は命を落とし、その犠牲は最強の鬼を打倒するために不可欠な要因となりました。
首を斬られても再生した黒死牟でしたが、実弥の刀に映った凶暴で禍々しい姿を見て絶望します。かつて黒死牟が追い求めた強さとはかけ離れた、醜い化け物でした。その姿に幻滅したことで力が衰え、ついに消滅します。
死の間際、黒死牟は家や妻子、人間であることを捨ててまで強さを求めたのに、結局「何も残らなかった」ことを嘆きながら息絶えました。
黒死牟が持っていた笛
黒死牟が消滅した後に残されたのは、黒死牟が幼い頃に弟の縁壱に渡した笛でした。この笛は、縁壱が兄を想い、生涯大切にしていたものです。縁壱を倒した際に回収した黒死牟も、その笛を最期まで手放しませんでした。
黒死牟の人生が縁壱という存在から逃れられない、永遠の繋がりの中にあったことがわかります。消滅する際にも、縁壱のことを鮮明に思い出しています。
継国縁壱への想い
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黒死牟の弟である縁壱に対する想いについて解説します。
縁壱に対する嫉妬心
厳勝は、幼い頃から家の跡取りとして、剣の道を究めようと稽古に励んできました。しかし、自分よりもはるかに剣の才に恵まれた弟・縁壱の存在が、厳勝の心を蝕んでいきます。縁壱への激しい憎悪を抱きながらも、その力を切望し、縁壱を超えることを強く願うようになっていました。
黒死牟が笛を持ち続けていた理由
黒死牟(巌勝)が弟・縁壱から受け取った笛を数百年にわたって持ち続けたのは、縁壱への複雑な感情の表れであると考えられます。
黒死牟は縁壱に激しい嫉妬や憎しみを抱いていましたが、その根底には縁壱の才能や強さに対する憧れ、そして深い愛情が隠されていたのではないでしょうか。縁壱を「憎い」と口にしながらも、子供の頃から大人になっても縁壱のそばを離れなかったのは、その愛情があったからだと考えられます。縁壱を斬った際に涙を流したことからも、黒死牟の感情が単純な憎しみだけではないことがわかります。
ライバル的存在だった?
黒死牟は縁壱をライバル視していたと考えられます。
黒死牟は縁壱に対して、縁壱の剣技や人格を欲しいと追い求めていることから負けず嫌いな性格であると考えられます。
黒死牟が本当に憎んでいたのは、縁壱ではなく、努力しても追いつけない自分自身の不甲斐なさだったのかもしれません。黒死牟は、その苦しみを認めたくないがために、「縁壱への憎しみ」という感情を使って自らを保っていました。
黒死牟の基本情報
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黒死牟のプロフィールと初登場情報
人間時の名前 |
継国厳勝(つぎくにみちかつ) |
---|---|
身長 |
190cm |
体重 |
93kg |
趣味 |
囲碁 |
血鬼術 |
月の呼吸 |
声優 |
置鮎龍太郎 |
黒死牟の初登場は、原作漫画では単行本12巻の第98話です。
アニメでは、『刀鍛冶の里編』の第1話で、上弦の鬼が集結するシーンで初登場しました。
劇場版「無限城編」は全3部作として制作され、上弦の壱・黒死牟との本格的な戦闘は第2章か第3章での展開が予想されています。
黒死牟の能力と強さの秘密
全てを見通す六つの目「透き通る世界」
黒死牟の特徴的な能力は、相手の動きや体内まで見通せる「透き通る世界」です。これは、縁壱が生まれつき持っていた天賦の才でした。黒死牟は、縁壱への執着から自身の肉体を変質させ、この能力を手に入れます。
六つの目を持つ異形の姿は、単なる威嚇ではなく、相手の筋肉の収縮や血流まで見通すことで、次の動きを完璧に予測するための器官なのです。
月の呼吸と血鬼術
黒死牟は、鬼になってからも月の呼吸を極め続けました。さらに、自身の血と骨から作られた刀「虚哭神去(きょこくかむさり)」を用いて、その威力を増幅させます。変幻自在な斬撃は、鬼殺隊を大いに苦しめました。
型名 |
技の詳細 |
|
---|---|---|
壱ノ型 |
闇月・宵の宮 |
一瞬で放たれる一太刀で斬撃を与える。 |
弐ノ型 |
珠華ノ弄月 |
連続で刃を振るい広範囲を攻撃。 |
参ノ型 |
厭忌月・銷り |
大きく刀を振るい放つ、二連撃の剣技。 |
伍ノ型 |
月魄災渦 |
刀を振るわずして広範囲に斬撃を繰り出す。 |
陸ノ型 |
常夜孤月 |
縦方向に孤を描く無数の斬撃で周囲を斬り刻む。 |
漆ノ型 |
厄鏡・月映え |
変化させた刀で間合いを広げ、遠距離から切り裂くような斬撃を高速で放つ。 |
捌ノ型 |
月龍輪尾 |
強烈な力で素早く繰り出す一太刀により、抉り取るように周囲を薙ぎ払う。 |
玖ノ型 |
降り月・連面 |
刀を背中から前方へ振るい、三日月のような斬撃を降らせる。 |
拾ノ型 |
穿面斬・蘿月 |
楕円型の鋸状を成した巨大な二連の刃が、逃げ道をなくすかのように地面を削りながら迫り来る。 |
拾肆ノ型 |
兇変・天満繊月 |
折り重なった渦状の斬撃で相手を猛攻。広範囲に渡り相手を襲うことが可能だが、その分隙間が生じる。 |
拾陸ノ型 |
月虹・片割れ月 |
複数の相手の位置を的確に狙った上方から地面を穿つ凄まじい破壊力の技。 |
無惨や他の鬼との関係性
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無惨からの評価
黒死牟は戦国時代から400年以上にもわたり、十二鬼月の最上位に君臨し続けました。その実力に奢ることなく、常に相手を冷静に分析する姿勢は無惨からも高く評価され、厚い信頼を寄せられていたと考えられます。無惨は黒死牟を単なる配下ではなく、ビジネスパートナーとして認めており、「日の呼吸」の剣士を共に徹底的に抹殺していきました。
また、黒死牟は無惨とは気が合う関係で、自分の考えていることをすべて読まれても一切気にしませんでした。無惨を裏切る意思は全くなく、むしろ感情を隠して取り繕う必要がないため、気が楽だったようです。
猗窩座との関係性
猗窩座は、黒死牟にとってお気に入りでした。通常、上弦の鬼は順位をかけて戦い、勝者が敗者を喰らうことで力を得ますが、黒死牟は猗窩座に血戦を申し込まれた際、猗窩座を喰らうことなく生かしました。
このことから、黒死牟はただ冷酷なだけでなく、特定の鬼に対しては特別な感情を抱いていたことがわかります。数百年の間で、黒死牟に入れ替わりの血戦を申し込んだのは、猗窩座を含めてたった3体しかいませんでした。
まとめ
以上、黒死牟に関する考察や既出情報についてまとめました。
『鬼滅の刃』に登場する上弦の壱・黒死牟は、鬼舞辻無惨に次ぐ実力を持つ最強の鬼です。黒死牟の正体は、鬼殺隊の「始まりの剣士」、継国縁壱の双子の兄、継国巌勝でした。
巌勝は、天才的な弟・縁壱への激しい劣等感から、永遠の命と強さを求めて鬼となります。しかし、最期は自分の醜い姿に絶望し、消滅しました。
黒死牟の生涯は、縁壱への嫉妬と憧れに支配されており、その複雑な想いは、黒死牟が数百年にわたり持ち続けた笛に象徴されています。黒死牟は、最期に「何も残らなかった」と嘆き、孤独な魂として消えていきました。
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