本記事では、『チェンソーマン』屈指の人気エピソード「レゼ篇」は、デンジとレゼの出会いから悲恋の結末、そして彼女の正体と目的が描かれる物語です。この魅力的な章のあらすじ、登場人物の関係性、そして劇場版の情報を詳しく解説します。
本記事では、『チェンソーマン』第二部の最新巻までと『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』のネタバレを含んでいるのでご注意ください。
劇場版公開で注目を集める「レゼ篇」の概要
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『チェンソーマン』の「レゼ篇」は、原作漫画の中でも特に人気の高いエピソードとして知られています。この物語は、デンジが初めてマキマ以外の女性に恋をする過程と、その悲劇的な結末を描いています。
映画化に適した物語の構成
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レゼ篇は、デンジとレゼの淡い恋から正体の露見、殺し合い、そして別離へと続く明確なストーリーラインを持つため、一本の劇映画として構成しやすい特徴があります。
カオスな展開が多い原作の中で、切なく感動できるシンプルな悲恋として成立している点が、映画向きと評価される理由の一つです。爆発というモチーフはアニメーションとして映えるので、光、色、音響が最大限に活かされることで、原作の魅力が映像で表現されます。
原作漫画とアニメでの登場範囲
レゼ篇は、原作漫画では第5巻の第40話「恋・花・チェンソー」から第6巻の第52話「失恋・花・チェンソー」にかけて描かれています。
アニメでは、第1期の最終話である第12話「日本刀vsチェンソー」のエンドロール後にレゼが初登場し、劇場版への期待を高めてました。
レゼの正体、結末、そして物語のあらすじ
『チェンソーマン』に登場するキャラクター、レゼは、デンジがマキマ以外に恋心を抱いた唯一の存在として描かれ、「レゼ編」というエピソードの中心を担います。彼女の可憐な外見からは想像できない悲劇的な物語と残酷な結末は、多くの読者に強い印象を残しました。
レゼのプロフィールと正体
レゼは、カフェ「二道」でアルバイトをする少女としてデンジの前に現れます。可愛らしい美貌と長い前髪、首元のチョーカーが特徴で、常に笑顔を浮かべる柔らかな雰囲気が読者の心を掴みました。しかし、その裏には恐るべき正体が隠されていました。
項目 |
内容 |
---|---|
年齢 |
不明 |
身長 |
不明 |
出身 |
ソビエト連邦 |
声優 |
上田麗奈 |
初登場 |
コミックス第5巻 第40話(アニメ第1期12話ED後) |
爆弾の悪魔と融合した武器人間
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レゼの真の正体は、デンジと同じく悪魔と融合した「武器人間」であり、「爆弾の悪魔」の力を持っています。手榴弾のような首元の金具を引き抜くことで変身し、爆弾や爆発を自在に操る多彩な攻撃でデンジたちを追い詰めます。
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手足を爆破して攻撃したり、肉体の一部を切り離して爆破したり、足を爆破してその爆風で高速移動したりなど、その戦闘能力は非常に高く、公安のメンバーを多数葬り去り、「台風の悪魔」にも恐れられるほどでした。
素手で殺し屋を絞め殺すなど、変身せずとも卓越した身体能力と格闘術を有しています。ただし、水中では爆発を起こせないという弱点も持ち合わせています。
ソ連のスパイ「モルモット」としての過去
レゼは単なる武器人間であるだけでなく、ソビエト連邦から派遣されたスパイでした。彼女はデンジの心臓を国家に持ち帰るという任務を負っていました。
ソ連には、軍の弾薬庫にある秘密の部屋に身寄りのない子供たちが詰め込まれ、自由を奪われ、物のように扱われ一生を終えるというおとぎ話があります。そこで国家の役に立つためだけに生きる戦士は「モルモット」と呼ばれていました。
レゼもまた、幼い頃からこの「モルモット」として訓練され、デンジに向けた笑顔や表情もすべて演技だったと明かされます。可憐な容姿に似合わない類まれな身体能力や戦闘能力は、幼少期から仕込まれたものでした。
雨の日の邂逅から深まる絆
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デンジとレゼの出会いは、雨宿りのための公衆電話ボックスでした。デンジが昔飼っていた犬に似ていると泣き出したレゼに対し、デンジは丸飲みしていた花を吐き出して差し出します。雨が止んだ後、レゼはアルバイト先のカフェ「二道」に来てくれたらお礼をすると伝え、デンジの興味を引きます。
カフェに現れたデンジに対し、レゼはコーヒーをサービスし、デンジの反応を面白がってボディタッチを繰り返します。デンジは「確定で俺のコト好きじゃん」と確信し、二人の距離は急速に縮まります。
夜のプールと「私が全部教えてあげる」
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レゼは高校に通っていないデンジを夜の学校に誘い出し、案内します。泳ぎ方を知らないデンジに、
レゼ「デンジ君の知らない事 できない事 私が全部教えてあげる」
出典: チェンソーマン 5巻 第42話
と語り、プールで泳ぎ方を教えながら束の間の楽しい時間を過ごしました。
この言葉は、自身の過去や本心を隠しながらも、デンジに心を開こうとするレゼの葛藤の表れでもありました。このシーンは、デンジの心に深く刻まれることとなります。
「一緒に逃げねぇ?」交錯する想いと結末
縁日を訪れた二人は、花火を見ながらレゼから
レゼ「仕事やめて……私と一緒に逃げない?」
「私がデンジ君を幸せにしてあげる。一生守ってあげる。お願い。」
出典: チェンソーマン 5巻 第43話
と誘われます。
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この時点では任務の一環でしたが、レゼの心にはデンジへの本物の感情が芽生え始めていました。デンジは迷いながらも、レゼからのキスを受け入れますが、その直後、レゼはデンジの舌を噛み切り、心臓を狙ってきます。
激しい戦闘の後、海に沈んだ二人。気を失っていたレゼが浜辺で目覚めると、デンジはトドメを刺さずに助けていました。
レゼが任務の失敗を理由に逃げようとすると、
デンジ「一緒に逃げねえ?」
出典: チェンソーマン 6巻 第51話
と誘います。
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レゼはデンジの言葉に心を動かされ、一度は去ろうとしますが、デンジが「今日の昼にあのカフェで待ってるから」と叫んだことで、電車に乗らずにカフェへ引き返します。
しかし、カフェの目の前で、レゼはマキマと天使の悪魔に襲撃されます。
レゼ「なんで…初めて出会った時に殺さなかったんだろう」
「デンジ君 ホントはね」
「私も学校に行ったことなかったの」
出典: チェンソーマン 6巻 第52話
というモノローグを残し、マキマに殺されてしまいます。デンジがカフェで待つ中、レゼがその場に現れることはありませんでした。
「田舎のネズミと都会のネズミ」のレゼの真意
イソップ寓話「田舎のネズミと都会のネズミ」は、レゼ編において重要なテーマとして登場します。
イソップ寓話の教訓とキャラクターへの適用
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「田舎のネズミと都会のネズミ」の物語は、田舎のネズミが都会のネズミの誘いで都会へ行くものの、危険な目に遭い、最終的には田舎の平和な暮らしを選ぶという内容です。この寓話の教訓は「幸せは人によって違う」とされています。
『チェンソーマン』作中では、天使の悪魔とレゼが「田舎のネズミ」派、デンジが「都会のネズミ」派と語っています。早川アキは天使と対置される形で「都会のネズミ」と位置付けられますが、彼自身は「田舎」を奪われた過去を持つ複雑なキャラクターです。
マキマとレゼの思想の対比
レゼ「田舎のネズミのほうがいいよ~ 平和が一番ですよ」
出典: チェンソーマン 5巻 第42話
と語り、モルモットとしての過去を持つ彼女にとって「平和」は本心からの願いでした。
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レゼにとっての「カフェ」は、唯一「普通」に暮らせる場所であり、学校に行ったことがない彼女が「学校」について語る姿は、彼女自身の「普通」への憧れを強く示唆しています。
デンジを殺せる機会はいくらでもあったにもかかわらず、彼女がそうしなかったのは、デンジと過ごした「普通の日常」が、モルモットとして生きてきた彼女にとってかけがえのないものだったからかもしれません。
しかし、マキマは同じ「田舎のネズミ」を好みながらも
マキマ「私も田舎のネズミが好き」
「畑の土の中には作物を荒らすネズミ達が潜んでいて 雪で土が隠れる前に駆除しておかなくちゃいけない」
「だから土を掘って中のネズミを犬に噛み殺して貰うんだけど…」
「…どうしてだろうね それを見ているととても安心するの」
出典: チェンソーマン 6巻 第52話
という自身はネズミですらない支配者の視点であり、二人の思想の根本的な違いが浮き彫りになります。
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デンジもまた、マキマの「犬」として働くことで衣食住を満たし、「都会のネズミ」のような幸不幸が隣り合わせの生活に満足していました。しかし、レゼを公安に引き渡すことには「魚の骨がノドに突っかかる」と例えるような違和感を覚え、彼女に対してはマキマの忠犬になりきれませんでした。
マキマが「ネズミを犬に噛み殺して貰うのを見ると安心する」のは、マキマ自身の思う通りに、言う通りに動いてくれる「犬」だから、「ちゃんと支配できているんだ」と思えるから安心するのでしょう。
デンジとレゼが象徴する「犬」と「ネズミ」
映画では原作よりも、マキマの「飼い犬」であるデンジと、別の「主人」の下で生きる「飼い猫」のようなレゼという象徴的な描写がなされています。しかし、レゼの真の正体は「飼い猫」のフリをした、国家に虐げられて「都会」から逃げたがっている「ネズミ」でした。
デンジとレゼの出会いや逢瀬でたびたび描かれる「雨宿り」は、「犬」と「ネズミ」という本来は争う関係の二人が、争うことなく同じ場所・時間を過ごす「あり得ない瞬間」を象徴しています。雨が止んでしまえば、そのかけがえのない瞬間は消え去ってしまうように、二人の恋は決して叶うことのない悲恋として描かれました。
レゼはなぜ再登場しないのか?
レゼが完全に消滅していない可能性が示唆されているため、第二部での再登場について様々な考察がされています。
公安対魔特異5課としての再登場と退場
マキマに殺されたレゼですが、物語の終盤で悲しすぎる復活を遂げます。
彼女はマキマが支配するデンジを殺す手駒「公安対魔特異5課」の一員として、他の武器人間と共に復活させられました。しかし、チェンソーマンとなったデンジ(ポチタ)に一瞬でバラバラにされ、再び退場します。
「レゼ」の時の記憶はなく、人間味や感情が描かれることもなく、一方的な決着でその役割を終えました。
「チェンソーの悪魔」に食べられなかったことの意味
「チェンソーの悪魔」に食べられた悪魔は、その存在ごとこの世から消滅し、最初からいなかったことになるとされています。
しかし、レゼはチェンソーマンに食べられたわけではありません。武器人間は心臓を破壊されると死亡しますが、チェンソーマンに食べられない限り完全に消滅することはないため、彼女の存在の有無自体は未だ不明とされています。
武器人間が死ぬとどうなるのかは不明ですが、通常の意味で完全に “死んで終わり” になることはない可能性が高いと思われます。しかし、黒いチェンソーマンに食べられると消滅するのかもしれません。
悪魔は元々地獄で生を受け、地獄で死ぬと人間の世界へと転生します。そして、人間の世界で悪魔が死ぬと今度は地獄へと転生するという「輪廻転生」を繰り返しています。この輪廻転生が武器人間にも適応されるのかは不明ですが、何かしら近いことが起きている可能性もあります。
武器人間の不死性と他キャラクターの復活
『チェンソーマン』第二部では、レゼと同じく武器人間の「弓矢の悪魔」であるクァンシが復活を果たしています。
マキマの死亡によって彼女の支配下から逃れ、公安側のキャラクターとして再登場したクァンシの例は、レゼが再び物語に登場する可能性が高くなっています。レゼは非常に人気が高く、デンジとの関わりも深いため、物語の鍵を握る存在として再登場が期待されています。
デンジの成長と欲望の更新
一方で、レゼが第二部に再登場しないという考察も存在します。第二部のデンジは、「モテたい」「食べたい」「セックスしたい」といった根源的な欲求で生き、それによって死や老いといった根源的な恐怖に対抗する物語を進めています。
もしここでレゼが再登場し、デンジに「好き」と告げて二人が結ばれるような展開になれば、デンジが抱える承認欲求や性欲、愛といった自意識の問題が一気に解決してしまい、第二部の物語の核が損なわれる可能性があるからこそ、再登場はしないのではないかという予想です。
チェンソーマン教会とロシア語の歌の伏線
第二部には、チェンソーマンを崇拝する「チェンソーマン教会」が登場し、その幹部を「ウェポンズ」と呼ばれる武器人間たちが務めています。
レゼが学校で襲撃された際に歌っていたロシア語の歌には「教会」というワードが含まれていました。この歌は実在するものではなく、オリジナル歌詞であることから、これが伏線となり、チェンソーマン教会の中にレゼがいる可能性も一部で示唆されています。
まとめ
『チェンソーマン レゼ篇』は、ソ連からのスパイである爆弾の悪魔・レゼとデンジの、切なくも悲劇的な恋を描いた人気エピソードです。
レゼは「モルモット」として育った過去を持ちながらも、デンジとの出会いを通じて人間らしい感情を芽生えさせ、「田舎のネズミ」のような平和な暮らしを夢見ます。しかし、マキマの介入により、二人の「もしもの未来」は無情にも断ち切られ、レゼは悲劇的な最期を迎えます。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、この濃密な物語を映像ならではの迫力と繊細な演出で描き出し、原作の魅力を最大限に引き出されました。レゼの死亡と、武器人間としての不死性からくる第2部での再登場の可能性は、今後の物語における重要な伏線として多くのファンに注目されています。デンジの成長、マキマとレゼの対立構造など、多層的なテーマが込められた「レゼ篇」は、『チェンソーマン』の世界観を深く理解する上で不可欠な物語であると言えるでしょう。
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