本記事では、彼女の正体、能力、デンジとの関係、作中に散りばめられた数々の伏線、そして衝撃的な最期まで詳しく解説します。
本記事では、「チェンソーマン」第一部完結と第二部「学園編」のネタバレを含んでいるのでご注意ください。
目次
マキマの基本情報
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マキマは公安対魔特異課のリーダーで美しい赤髪と印象的な黄色い瞳を持つ女性として描かれています。
常に柔らかな笑顔を浮かべ、上品で落ち着いた雰囲気を醸し出す彼女の外見は、デンジとアキを含めた部下や同僚たちを魅了しました。しかし、なぜか姫野と岸辺には警戒されており、パワーは恐れを抱いています。
所属 |
公安対魔特異4課 内閣官房長官直属のデビルハンター |
---|---|
一人称 |
私 |
身長 |
169cm |
契約悪魔 |
不明 |
趣味 |
映画鑑賞 |
CV |
楠木ともり |
マキマの正体と能力
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マキマの正体は「支配の悪魔」であり、ヨハネの黙示録に登場する四騎士の第一の騎士「支配(征服)」を司るものです。そして能力はいくつもあります。
不死身
マキマが何度致命傷を負っても生き返る理由は、日本の内閣総理大臣との特別な契約にありました。
契約内容
マキマが受ける攻撃は内閣総理大臣との契約により、日本国民の事故や病気として変換されるので、どれだけ致命傷を受けたとしても自動的に回復する。つまり、マキマを倒すには日本国民1億2000万人全員を殺すまで攻撃する必要があります。その結果、マキマは不死身と同じ状態になっています。
この契約により、第25話で頭を銃で撃ち抜かれて死んだかに見えたマキマも、第26話では何事もなかったかのように復活していました。読者に強烈な印象を与えたこのシーンも、後に全ての謎が明かされることになります。
他人を支配する能力
マキマの最も根本的な能力である「支配」は、単純な洗脳や操作を超えた能力です。
発動条件はマキマが自分自身よりも格下だと思っている相手が支配対象で、
「これは命令です。契約するといいなさい」
出典: チェンソーマン 第9巻 74話
と言うだけで相手を完全に支配できます。
支配された相手は思考能力を失い、マキマの命令に従うようになります。それだけでなくその相手が契約している悪魔も操ることができます。
銃の悪魔の戦闘時にはアキの契約悪魔である「未来の悪魔」や沢渡アカネの契約悪魔の「蛇の悪魔」の能力などを使用していました。
作中では早い段階から「これは命令です」というセリフが登場していましたが、これは単なる上司としての指示ではなく、文字通り支配の悪魔としての命令だったのです。
さらに死者をも支配することができ、デンジやチェンソーの悪魔との戦いの際にはレゼやサムライソードなどの武器人間を使役し、戦いました。
遠隔から人を圧死させる能力
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第27話で初披露されたこの能力は、マキマの持つ最も印象的な攻撃手段の一つです。
発動条件は標高の高い場所にある神社で生贄(終身刑以上の囚人)に圧死させたい対象の名前を言わせた後に、マキマが手をすり合わせることで能力を使用できます。
デンジたちを襲った刺客たちは、まるで巨大な手に握り潰されるかのように一瞬で圧死しました。この攻撃は物理的な距離を無視し、京都から東京の敵を瞬殺する恐るべき能力として描かれています。
「標高の高い神社」という条件は、マキマが文字通り他者を「見下ろす」位置に立つ必要があることを示しており、「支配」の概念を空間的にも表現した演出でした。
下等生物を支配し聴覚を共有する能力
ネズミや鳥などの生物を支配し、その聴覚を共有し情報を集めることができます。作品内で合間に挟まる小動物の描写は、マキマが盗聴ことを示唆するような描写となっています。
上述した圧死させる能力もカラスで沢渡やサムライソードたちを盗聴しながら能力を行使したり、デンジの待つカフェへと向かうレゼもネズミを使って盗聴して始末したり、クァンシの魔人の一人「ピンツイ」が「尸体在说话(死体が喋っている)」と言ったことを、マキマがクァンシを殺す際にマキマも「死体が喋っている」と意趣返ししたのも盗聴していたからです。
レゼを始末する時、デンジとレゼしか知らないはずの「田舎のネズミと町のネズミ」の話を知っていたのはこの能力のおかげです。
嗅覚
人間の顔ではなく匂いで相手を認識することができ、チェンソーマン特有のにおいを識別できます。
しかし、「悪魔は人より鼻が利く」という設定があることから、「支配の悪魔」特有の能力というわけではないのだと思われます。
マキマの目的
より良い世界を作ること
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マキマの目標は「チェンソーマンを使ってより良い世界を作ること」でした。
マキマは岸部との戦闘時に、
「私はチェンソーマンを使ってより良い世界を作りたいのです」
出典: チェンソーマン 第10巻 84話
と理想を語りました。
一見すると人類の救済を願う崇高な目的に見えますが、実際はマキマ自身の欲望を満たすための手段に過ぎませんでした。
チェンソーマンの能力
マキマは理想のためにチェンソーマンの能力を使おうとしました。
それが「食べた悪魔を存在ごと消去する」というものです。
これまでにチェンソーマンが消去したものは
- 「ナチス」の悪魔
- 「第二次世界大戦」の悪魔
- 「アーノロン症候群」の悪魔
- 「祖阿」の悪魔
- 「エイズ」の悪魔
- 「核兵器」の悪魔
- 「比尾山大噴火」の悪魔
これらの悪魔が消去されたことで、人類の記憶からも完全に抹消され、「最初からなかった」ことになっています。
第二次世界大戦や核兵器という人類史上最大の悲劇すら、チェンソーマンによって歴史から消し去られていたのです。
岸辺にはそれらの記憶はなく、この能力の証明になっていました。
マキマが消したい悪魔
マキマはチェンソーマンの力を使って、以下の悪魔を世界から消去しようと計画していました。
- 死の悪魔:死そのものをなくし、永遠の生を実現
- 戦争の悪魔:争いのない平和な世界を作る
- 飢餓の悪魔:飢えに苦しむ人をなくす
マキマのチェンソーマンへの歪んだ愛
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マキマはチェンソーマンのファンであると言っていて、
「チェンソーマンに食べられ彼の一部になる…それほど光栄なことはありません」
出典: チェンソーマン 第10巻 83話
と岸辺に話すほどマキマにとってチェンソーマンを支配することも、チェンソーマンに消されることも、等しく望ましい結果でした。地獄で悪魔たちを震え上がらせた「地獄のヒーロー」に対する憧憬と畏敬が、彼女の行動原理となっていたのです。
そこでデンジとポチタの「デンジが普通の暮らしをポチタに見せる代わりに、ポチタがデンジの心臓になる」という契約を破棄させ、
チェンソーの悪魔を復活させるためにマキマは段階的な計画を実行しました。
家族といる幸せ
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マキマはデンジ、アキ、パワーの3人を意図的に同居させ、家族のような関係を築かせました。
孤独だったデンジにとって、アキとパワーとの生活は初めて味わう「普通の幸せ」でした。
マキマは意図的にこの幸福を与えたのです。
与えた幸せを奪う
マキマはアキが「銃の魔人」になるよう仕向け、デンジ自身の手でアキを殺させました。家族同然だった相手を自分の手で殺すという、これ以上ない精神的な苦痛をデンジに与えたのです。
さらにマキマはパワーを自分の家にケーキを持ってこさせて、マキマが「デンジ君がドア開けて」「私がパワーちゃんを殺すから」と言い玄関のドアをデンジに開けさせ、目の前でパワーを殺害しました。デンジの「普通の幸せ」を完全に破壊したのです。
生きる意味の喪失
家族のようなアキとパワーがいなくなぅた後にマキマはデンジに衝撃的な事実を伝えました。
「デンジ君のお父さんを殺したのは…デンジ君だよ」
「パワーちゃんを殺すのを手伝って早川君も助けられたかもしれないのに殺して、それで自分の父親も殺してそんな人間が普通の生活なんて望んでいいはずがないよね?」
出典: チェンソーマン 第10巻 82話
デンジがずっと心にカギをかけ思い出さないようにしていた真実に気付かせるだけでなく、罪悪感を与えることで生きる気力を奪うことに成功しました。
その結果、普通の生活をするという契約が破棄されることで、チェンソーマンが再びこの世にあらわれることになったのです。
マキマが本当に望んだもの
物語の最終局面で、ポチタによってマキマの本当の心の内が明かされます。
「支配の悪魔はね、ずっと他者との対等な関係を築きたかったんだ」
「恐怖の力でしか関係を築けない彼女にとって、家族のようなものにずっと憧れていた」
「それで間違った方法だったけど、そういう世界を作りたかったんだ」
出典: チェンソーマン 第11巻 97話
支配の悪魔としてのマキマは、その存在自体が他者に恐怖を与えるため、真の意味での対等な関係を築くことができませんでした。
全ての存在が彼女より「格下」になってしまうため、友情も愛情も、全てが一方的な支配関係になってしまうのです。彼女は誰かと一緒に、対等になりたかったのです。
最終的な結末
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チェンソーマンの分身とマキマが戦い、マキマが匂いで個人を識別していることを逆手に取りデンジがパワーの血で作ったチェンソーでマキマを攻撃し、パワーの血でマキマの再生を阻害することで倒しました。
マキマは第39話デンジがサメの魔人に慕われる理由を聞かれたとき、
「顔が似ているからかな」
出典: チェンソーマン 第5巻 39話
と言いましたが、実際にはデンジとサメの魔人の顔は全く似ていないため、読者に違和感を与えました。これは、マキマが人の顔を覚えておらず、匂いでのみ判断していることの伏線でした。
ですがマキマは不死身の能力を持っているのでチェンソーやパワーの血といった攻撃では倒せません。そこでデンジはある作戦を思いつき、実行に移します。
愛をもって「食べる」
勝利したデンジが選択したのは、普通の幸せを壊されたのにも関わらず、マキマを憎むことができなかった、まだ心底好きだったのです。だからこそ、デンジが選んだのはマキマを「殺す」ことではなく愛をもって「食べる」ことでした。
しかし、今までマキマがしたことは許されることではないこともデンジはわかっていました。なので、マキマを食べることによりマキマの「罪」を一緒に背負うことを決めたのです。
目論見としては、マキマは普通に殺しても内閣総理大臣との契約で日本国民が身代わりになるので、攻撃ではなく食べるという契約の隙を突いたのです。ですが、上述したデンジからマキマへの愛があったからこそ、「食べる」という行為も攻撃とみなされなかったのでしょう。
マキマ定食のメニュー
デンジはマキマの体をチェンソーでバラバラにし、タッパーに入れて冷蔵庫で保存した後、デンジはアパートの一室を借り、たった一人でマキマを料理しました。
- 生姜焼き
- カツ
- 鍋料理
- 肉だけカレー
- ハンバーグ
- 肉寿司
- ナゲット
- モツ味噌煮込み
- 肉団子
- マジ闇鍋
- ステーキ
- 肉まん
- ヤバジュース
これらがデンジがマキマを使って作ったメニューになります。作り始めは一般的な料理でしたが、徐々に「マジ闇鍋」や「ヤバジュース」のような料理とは言えないもので無理やりお腹に入れていました。
ヤバジュースに髪の毛が映っていたので、マキマの肉だけでなく骨や髪の毛なども含めたすべてを食べて、言葉通りマキマを「完食」したであろうことがわかります。
その結果、マキマはデンジお腹からも便所からも復活せず、倒すことに成功したのです。
第二部への影響
支配の悪魔ナユタとして転生
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マキマ個人は完全に消滅しましたが、人間の「支配への恐怖」が存在する限り、支配の悪魔は転生し続けます。
第1部の最終話で「ナユタ」という幼い少女の姿で転生し、物語に再登場しました。その時にナユタがデンジの指をかむことですぐにデンジがナユタがマキマの生まれ変わりであることだ分かります。
第12話でデンジの指を噛みながらのマキマが
「目が見えなくなっても、私の噛む力で私だってわかるくらいに覚えて」
出典: チェンソーマン 第2巻 39話
というやりとりの伏線を回収したのでした。
デンジとナユタの新しい関係
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デンジは岸辺に、
「お国に任せて育てさせたら、またマキマのようになっちまうだろうな」
出典: チェンソーマン 第11巻 97話
とナユタを任せられてしまいます。その日からマキマの飼っていた犬と一緒に暮らし、朝食には食パンを食べるという普通の生活をします。
そして、支配の悪魔の望みである他者との対等な関係を作るためにデンジはナユタをたくさん抱きしめてあげるのでした。
他の四騎士の影響
第二部では、戦争の悪魔(ヨル)が重要キャラクターとして登場しています。四騎士の中で最初に倒されたマキマ(支配の悪魔)の転生は、飢餓と死の悪魔の動向にも影響を与える可能性があります。
マキマが消そうとした「戦争」「飢餓」「死」の悪魔たちはどういった存在であったのかが明かされることになります。
マキマとは何だったのか
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マキマの物語は、「支配」と「愛情」の境界線の曖昧さを描いています。彼女がデンジに示した感情は支配欲だったのか、それとも歪んだ形の愛情だったのか。この問いかけは、現実の人間関係においても重要な意味を持ちます。
そしてマキマの根本的な問題は、その力ゆえの孤独でした。全ての存在を支配できる力を持ちながら、真の意味での対等な関係を築けない悲劇は、現実社会の権力者にも通じる普遍的なテーマです。
まとめ
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マキマは『チェンソーマン』という作品において、単なる敵役を超えた存在意義を持っています。支配の悪魔としての圧倒的な力、対等な関係への切ない憧れ、デンジとの複雑な関係性、そして愛によって打ち破られる結末まで、全てが緻密に計算された傑作キャラクターです。
第1話から最終話まで散りばめられた数々の伏線、読者の感情をも操作する巧妙な演出、そして第二部への影響まで考慮すると、マキマは間違いなく現代漫画史に残る魅力的なキャラクターの一人といえるでしょう。
第二部以降デンジとの新しい関係や他の四騎士との展開が注目されます。
藤本タツキが作ったこの複雑で魅力的なキャラクターは、『チェンソーマン』という作品の核心部分を担い、読者の心に深い印象を残し続けているのです。
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