この記事では、呪術廻戦の呪胎九相図についてネタバレ解説・考察しています。作品内の伏線やキャラクターのモチーフや含まれているとされる要素などについてもまとめています。
本記事では、単行本最新巻とジャンプ本誌第259話までのネタバレを含んでいるのでご注意ください。
呪胎九相図とは?
呪胎九相図とは何かについて解説します。
呪胎九相図
出典: x.com
呪胎九相図とは9体の呪物の総称です。
呪霊と人間の混血の子供の亡骸が呪物になったものをまとめて呪胎九相図と言います。
呪胎九相図は1~9番まで存在しており、1~3番は特級呪物に指定されています。
元ネタは仏教絵画「九相図」
呪胎九相図の元ネタは、仏教絵画の「九相図(くそうず)」です。
九相図は、屋外に打ち捨てられた人間の遺体が、時とともに朽ち果てていく様子を九つの段階に分けて描いた絵のこと。この絵の主な目的は、修行僧が煩悩、特に「色欲」を断ち切るための修行でした。
なぜなら、九相図には檀林皇后や小野小町のような、その時代における「絶世の美女」の変わり果てた姿が描かれることが多かったからです美しかった女性が、やがて醜く朽ちていく様を直視することで、修行僧たちは「この世のすべてのものは無常である」という真理を悟り、欲望から解放されることを目指したのです。
九相図と呪胎九相図の関係
呪胎九相図の1番から9番までの名前は、この九相図に描かれる死体の変化の段階と完全に一致しています。
呪胎九相図と九相図の名称、9段階の過程は以下の通りです。
呪胎九相図の名称 |
九相図の名称 |
9つの段階 |
|
1番 |
脹相 |
脹相 |
死体が腐敗ガスによって内部から膨張する。 |
2番 |
壊相 |
壊相 |
死体の腐乱が進み、皮膚が破れて壊れ始める。 |
3番 |
血塗 |
血塗相 |
死体の腐敗による損壊がさらに進み、溶解した脂肪、血液、体液が体外に滲み出る。 |
4番 |
膿爛 |
膿爛相 |
死体自体が腐敗により溶解する。 |
5番 |
青瘀 |
青瘀相 |
死体が青黒くなる。 |
6番 |
噉相 |
噉相 |
死体に虫がわき、鳥獣に食い荒らされる。 |
7番 |
散相 |
散相 |
以上の結果、死体の部位が散乱する。 |
8番 |
骨相 |
骨相 |
血肉や皮脂がなくなり、骨だけになる。 |
9番 |
焼相 |
焼相 |
骨が焼かれて灰だけになる。 |
呪胎九相図は、その名称だけでなく、外見や術式にも九相図の段階が色濃く反映されていると考えられます。例えば、脹相は比較的、人間の姿を保っていますが、壊相、そして血塗となるにつれて、より呪霊に近い異形の姿へと変化していきます。これは、九相図において死体が腐敗によって段々と人間の形を失っていく過程と見事に一致しているのです。
特に、壊相が使う「蝕爛腐術」や血塗の口から噴出される血液は、九相図における「壊相」や「血塗相」で描かれる死体の腐敗による皮膚の破壊や、血液・体液の滲み出しといったグロテスクな描写と強く関連しています。見た目だけでなく、攻撃によって相手を腐食させる能力も、死体が朽ちていく過程を具現化したものと言えるでしょう。
呪胎九相図の誕生経緯
出典: x.com
呪胎九相図は呪霊の子を孕む特異体質の娘から産まれました。
明治のはじめに娘は身の覚えがない懐妊をします。娘から産まれた子は呪霊と人間の混血の異形の子でした。
娘は親類縁者からの風当たりも悪かったため、娘は子の亡骸を抱えて加茂憲倫が開いていた寺に駆け込みました。しかし、加茂憲倫は知的好奇心から娘は九度懐妊し、九度堕胎しました。
懐妊の方法、彼女がどうなったかの一切の記録は破棄されているため不明です。
加茂憲倫が呪霊の子を孕む特異体質の娘に九度懐妊させ、九度堕胎させて産まれたのが、呪胎九相図の1~9番です。
現代の呪胎九相図の所在
呪術高専は、呪胎九相図を回収後、忌庫(きこ)で厳重に保管していました。
特に、1番から3番までの呪胎九相図は特級呪物に指定されており、その強力な性質から、高位の呪術師であっても破壊することは不可能でした。
そのため、呪術高専は呪胎九相図が「生命活動を停止し、かつ一切の害をなさない」という”縛り”をかけることで、その存在を保障し、封印を施してきました。この封印は、実に150年もの長きにわたり維持されてきたものです。しかし、この強固な封印も、後述するある出来事によって破られることになります。
呪胎九相図の兄弟
作中でキャラクターとして登場する呪胎九相図の「1番・脹相」、「2番・壊相」、「3番・血塗」の性格や能力について紹介します。
1番・脹相
等級:特級呪物
生得術式:赤血操術
反転術式:使用可
特異体質:血液に毒性あり。呪力を血液に変換可能。
嗜好・趣味:弟
嫌いな物:加茂憲倫(羂索)
声優:浪川大輔
九相図兄弟の血液は呪霊と人間の混血であるため、呪力を血液に変換できる特異体質を持っており、呪力がなくならない限り失血死しません。
不利な状況でも冷静に判断し、対応しますが、弟のことになると感情的になる一面があります。弟たちへの愛を力に変えて、羂索と戦えるほど強力です。
術式
「赤血操術」という血液を加圧し限界まで圧縮する技を使用します。
- 苅祓(かりばらい)術者の血液を手裏剣のような円形状の刃に変え、高速回転させながら放つ技です。脹相もこの技を多用しており、使い勝手が良く、中距離からの攻撃に適した技と考えられます。
- 百斂(びゃくれん)
術者の血液を加圧・圧縮する技です。これ自体に攻撃力はありませんが、後の穿血や超新星といった大技の威力を高めるための準備段階として不可欠です。加圧・圧縮の技術は練度を示す指標となり、例えば加茂憲紀は手の中に一つしか作れないのに対し、脹相は自分の周囲に複数ストックできるなど、術者によってその能力に差があります。
- 穿血(せんけつ)
百斂で圧縮した血液を一点からビーム状に放つ赤血操術の奥義です。その初速は音速を超え、苅祓を大きく凌ぐ威力を持ちます。さらに放った後軌道を変えることが可能です。
- 超新星(ちょうしんせい)
脹相オリジナルの拡張術式で、百斂(びゃくれん)で圧縮した血液を全方位に散弾のようにばら撒く技です。いわば「血液爆弾」であり、穿血に比べて単体への攻撃力は劣りますが、広範囲の敵を攻撃できる点が特徴です。 - 血星磊(けっせいらい)血液を限界まで凝固・圧縮し、極限まで硬度を高めた小型の血液の塊を打ち出す技です。作中では水場で技が使用できなくなった際にも使われており、虎杖の肝臓を打ち抜く威力はあります。
- 血刃(けつじん)血液の輪郭を刃状に変形させ、高速で回転させることで殺傷能力を高めた技です。
- 赫鱗躍動(せきりんやくどう)
術者が自身の体内の血液を操作することで、身体能力を爆発的に向上させるドーピングのような技です。血流だけでなく、体温や脈拍、血中成分までも操作し、身体能力向上以外にも、低温への耐性や外傷の止血なども可能とします。
2番・壊相
等級:特級呪物
生得術式:蝕爛腐術
反転術式:不明
特異体質:血液に毒性あり。呪力を血液に変換可能。
嗜好・趣味:兄弟
嫌いな物:背中を見られること。加茂憲倫(羂索)
声優:檜山修之
2番の壊相は呪胎九相図の次男です。
背中に顔のようなあざがコンプレックスであり、背中を見られることを嫌います。
背中を見られることを嫌う理由もあざが原因でそこから変なにおいがするためです。また、むれるため、女性用のハーネスとTバックといった露出の高い服装をしています。
術式
壊相は「蝕爛腐術」を使います。蝕爛腐術は、赤血操術と同様に呪力を血液に変えて攻撃します。
毒ではありませんが、体を分解し、腐食が始まるため、結果的に有毒となります。
- 極ノ番・翅王(しおう)極ノ番・翅王は、蝕爛腐術の奥義です。自身の血液を翅のように広げ、翅から血液で作った無数の矢やレーザーを放つ広範囲攻撃です。翅から放たれる血液は、高速で敵を追いかけ、触れたものを血液の毒の力で腐食・溶解します。しかし、翅王自体の血液の毒性は「死ぬほど痛むが、全身に浴びない限りは死なない」程度です。
- 朽(きゅう)
朽は、蝕爛腐術の真髄であり、自身の血液を粘膜や傷口から取り込ませることでは発動する技です。発動中は、分解箇所に薔薇のような紋様が浮かび上がるのが特徴です。術式開示を駆使すれば10〜15分以内に対象者を死に至らしめれるほどの殺傷性があります。また、弟である血塗の血液が粘膜や傷口に侵入することでも発動できます。
3番・血塗
等級:特級呪物
生得術式:蝕爛腐術
反転術式:不明
特異体質:血液に毒性あり。呪力を血液に変換可能。
嗜好・趣味:兄弟
嫌いな物:加茂憲倫(羂索)
声優:山口勝平
3番の血塗は呪胎九相図の三男です。戦闘を遊びと考える子供のような性格をしています。人間とはかけ離れた姿をしており、より呪霊に似ている外見です。
術式
壊相同様に蝕爛腐術の使い手です。朽は発動できますが、極ノ番・翅王は使えません。
そのため、壊相とは違い、口から血を噴射して攻撃します。口から噴射した血は触れたものを腐らせる能力がありますが、殺傷能力はありません。
呪胎九相図の登場
呪胎九相図がどのようにして登場しはじめるのかについて紹介します。
真人による盗み出しと受肉
呪胎九相図は真人が盗み出したことで登場するようになります。
本来、特級呪物は壊せないため、呪術高専の危険度の高い呪物を保管する蔵に保管されていました。
しかし、姉妹校である京都校との交流戦で呪霊たちの襲撃にあった際、真人によって特級呪物である1~3番の脹相、壊相、血塗が盗まれました。
盗まれた脹相、壊相、血塗は夏油(羂索)と真人によって、人間に受肉されます。
壊相・血塗と虎杖・野薔薇の交戦
出典: jujutsukaisen.jp
虎杖らは呪霊により3人の男が似た状況で死亡する事件が起きたことで八十八橋に調査に行っていました。
同時に壊相と血塗も宿儺の指を回収するというお遣いに八十八橋に行っており、虎杖らと遭遇し戦闘になります。
壊相と血塗も蝕爛腐術により、10~15分程度で死に至ると宣告されますが、野薔薇の共鳴りと虎杖の黒閃を駆使し、壊相と血塗を倒します。
渋谷事変での交戦
出典: jujutsukaisen.jp
五条悟を封印後、弟の仇である虎杖を探し、戦闘になります。
虎杖と脹相の実力差は明らかで虎杖は脹相に圧倒され、戦闘不能になります。
脹相は虎杖に止めを刺そうとしますが、存在しない記憶が脳内にあふれ出し、止めを刺さず、その場を立ち去ります。
脹相の真相
脹相は母親の記憶がなく、人間にも呪術にも恨みはありません。
150年間、兄弟の存在だけを頼りに封印を保ってきました。兄弟のためなら何でもするほどの想いがあります。
呪霊側から虎杖側についた真相を解説します。
呪霊側についていた経緯
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兄弟を想う気持ちは強く、呪霊が描く未来の方が兄弟にとって都合がいいため、呪霊側についていくことにしました。脹相のこの判断は、異形である弟たち(壊相、血塗)が人間社会で苦しむ姿を見たくなかったという、深い愛情に基づくものでした。
脹相は普通の人間と変わらない姿をしています。しかし、壊相、血塗は人間とは異なる姿をしていることから、人間には受け入れらることは難しいと脹相は判断しました。
脹相にとって、呪霊であるか、人間であるかは重要ではありません。ただ、呪霊が目指す世界こそが、弟たちが最も生きやすい世界であると信じ、弟たちのために、呪霊側に加担し、虎杖たちと敵対することを選んだのです。
渋谷事変の前半では、壊相、血塗を虎杖らに殺されたため、仇を討つために自ら進んで行動しています。
虎杖側についた経緯
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呪霊側につき敵対していた脹相でしたが、虎杖との戦闘後、虎杖側につき、味方になります。
存在しない記憶により虎杖は血の繋がった兄弟だとわかったことで虎杖のお兄ちゃんとして行動するようになります。
また、弟である虎杖を殺させようとした夏油を敵とし、怒りの感情を持ち、戦います。
呪胎九相図と虎杖の関係
出典: jujutsukaisen.jp
呪胎九相図と虎杖は血の繋がった兄弟です。兄弟である証拠について紹介します。
兄弟だとわかるきっかけ
呪胎九相図と虎杖が血の繋がった兄弟であるとわかったきっかけは脹相との交戦です。
脹相は五条悟との戦闘ではやる気がなく渋々戦っているように見えます。しかし、壊相と血塗の仇である虎杖を殺すために本気で戦い、虎杖を瀕死まで追い込みました。
止めの一撃を与えようとした際、脹相の脳内にあふれ出したのが存在しない記憶です。脹相は頭を抱えて止めを刺さず、その場を立ち去りました。
存在しない記憶の意味
存在しない記憶は虎杖が弟であることを意味しています。存在しない記憶の影響により止めを刺せなかったのです。
存在しない記憶は懐相と血塗、虎杖、残りの6体の兄弟の亡骸と楽しそうに食事をする記憶は家族の団欒のようでした。虎杖と兄弟が食事する記憶は虎杖が兄弟であるというメッセージです。
脹相は自身の術式の影響で血のつながった弟たちの異変はどんなに遠くにいようと感じ取れます。生物にとって死は最後で最大の異変であり、存在しない記憶を虎杖の死を強烈に感じとった証拠です。
脹相の術式の影響を受けた虎杖は脹相と血の繋がった弟だとわかります。
羂索の関わり
羂索は呪胎九相図の誕生にも虎杖の誕生にもかかわっています。
呪胎九相図には母と母を孕ませた呪霊、その間に血を混ぜた母を弄んだ羂索(加茂憲倫)の3人の親がいます。加茂憲倫は羂索に身体を乗っ取られている状態であり、羂索の知的好奇心から呪胎九相図は生み出されました。
虎杖の母である虎杖香織も羂索が身体を乗っ取っている状態で羂索が宿儺の器を作るために虎杖を産みました。
羂索が関与して呪胎九相図と虎杖が産まれたため、呪胎九相図と虎杖は腹違いの血の繋がった兄弟になります。
呪胎九相図と虎杖のその後
出典: jujutsukaisen.jp
呪胎九相図と虎杖のその後について解説します。
脹相と九十九の約束
九十九は虎杖の未来に脹相はいないのかと聞きます。
脹相は呪いとして生きるという楽な道を選んだことや人間だけじゃなく、自身の選択で兄弟をころしてしまった後悔、こんな自分は虎杖とはいきていけないと思っていることを話します。
しかし、九十九は夏油との闘いの中、脹相を逃がす際、呪いとしての脹相はここで死んだことにして、これからは人として虎杖のそばで生きることを伝えます。
脹相が人として生き、虎杖の未来にいること、虎杖を独りにしないことが九十九との約束です。
脹相以外の呪胎九相図兄弟の生死・行方
呪胎九相図の9兄弟のうち、2番の壊相と3番の血塗は虎杖と野薔薇との戦闘で死亡しています。
残り6体の呪胎九相図は虎杖、脹相、九十九らが天元の元へ向かう際に回収しています。その後、虎杖が残りの呪胎九相図を取り込みました。
虎杖は残りの6体の呪胎九相図を食べることで呪力に変えました。呪胎九相図を取り込んだ影響で虎杖は赤血操術を使えるようになります。
脹相が残り6体の兄弟を「亡骸」と表現しています。さらに漫道コバヤシでの作者の発言からも、呪胎九相図の1番から3番(脹相、壊相、血塗)は母親の存命中に生まれたため自我を持っています。一方で、4番以降の6体はほぼ死んでいると発現しており、呪物化していますが、脹相たちのような意識は存在していません。
師弟関係
虎杖が赤血操術を使いこなせるように脹相と加茂憲紀が虎杖に赤血操術を使うコツを教えます。脹相は虎杖に教えるのが下手だと言われていました。
しかし、宿儺との戦闘中、虎杖は力のコントロールができきれず、吐血してしまいました。
焦っている虎杖に脹相は再び虎杖が戦えるように師として助言し助けます。
また、赤血操術の術式をうまく使いこなせない虎杖を脹相はサポートしながら戦いました。
脹相と虎杖の最後
宿儺は戦闘で奥義である竈の炎の術式を使いました。
脹相が血の壁で虎杖を囲み、命と引き換えに助けます。
ボロボロと体が崩れながらも脹相は、最後兄として赤血操術をうまく教えられなかったことと虎杖を独りにとりにしないという九十九との約束を破ってしまうことを謝ります。
しかし、虎杖は一番しんどい時に脹相が隣にいてくれたと話します。
脹相はこの言葉から150年保管されていた期間と同じように虎杖にとって一番しんどかった数日は同じだったと理解します。
脹相と虎杖はただの血の繋がりだけでなく、壊相と血塗のようにしんどい時期をともにした心で繋がった兄弟だったことがわかります。
まとめ
以上、「呪胎九相図」に関するネタバレ解説・考察についてまとめました。
脹相は、虎杖の敵として現れ、激しい戦いを繰り広げました。しかし、虎杖は脹相の弟だとわかり、脹相は味方になります。
そして、最後は宿儺との戦いで虎杖を守るために命を落とすという悲劇的な結末を迎えます。
呪胎九相図は、その複雑な背景と強力な能力により、『呪術廻戦』の世界観を深める重要な要素となっています。
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