この記事では、映画『閃光のハサウェイ』第1部の内容について、ネタバレを含めて徹底的に解説・考察します。あらすじ、主要な登場人物、作品の背景にある世界観、注目のモビルスーツ、そして見どころとなる各シーンの演出や意味まで深掘りしていきます。
本記事は映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』第1部およびその他ガンダム作品の核心的なネタバレを含みます。
目次
閃光のハサウェイとは?
2021年に公開された映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、宇宙世紀を舞台としたガンダムシリーズの新たな金字塔として多くのファンを熱狂させました。
本作は、シリーズの中でも特に根強い人気を誇る富野由悠季氏の同名小説を原作とし、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から12年後の「宇宙世紀 0105年(U.C.0105)」を舞台にした物語です。全3部作として描かれるこの壮大な物語の第1部では、主人公ハサウェイ・ノアの新たな戦いが描かれます。
そして、第2部『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が今冬に公開予定されています。
「閃光のハサウェイ」第1部のあらすじと解説
出会いとハイジャック
宇宙世紀0105年、反地球連邦政府運動「マフティー」のリーダー、ハサウェイ・ノアは、秘密裏に入手した新型MS「Ξガンダム」を受け取るために月から地球へ向かう高級シャトル「ハウンゼン356便」に搭乗していました。
同じ便には、マフティー討伐のために地球へ赴任する連邦軍大佐ケネス・スレッグと、謎の美少女ギギ・アンダルシアも乗り合わせています。
シャトルが大気圏に降下した直後、偽マフティーを名乗るテロリスト集団がシャトルをハイジャックします。
彼らは身代金を要求し、反抗する乗客を射殺します。その光景を見たギギが発した「やっちゃいなよ。偽物なんか。」という言葉に、ハサウェイはかつて心を通わせた少女クェス・パラヤの幻影を重ね、突き動かされます。ハサウェイはテロリストから銃を奪い反撃を開始。ケネスの機転もあり、ハイジャック犯は制圧されます。
シャトルはフィリピンのダバオに緊急着陸。ハサウェイは事情聴取のためにギギと共にホテルに宿泊することになります。ギギはハサウェイがマフティーであることに気づきつつ、彼に興味を示します。ハサウェイはギギやタクシー運転手からマフティーの活動を嘲笑され、理想と現実のギャップに苦悩します。
ホテル襲撃
ハサウェイは植物園でマフティーの仲間と接触し、今後の合流計画を立てます。計画には、ハサウェイを脱出させるための陽動として、政府高官が宿泊するホテルをマフティーが襲撃することが含まれていました。ホテルに戻ったハサウェイは、自分を構わないギギがケネスとディナーに向かうのを見送ります。
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深夜、マフティーのMS部隊がダバオ空港を空爆し、続いて政府高官のホテルを狙撃します。目を覚ましたハサウェイはギギを連れてホテルから脱出。マフティーの仲間との合流地点に向かいますが、恐怖に怯えるギギを置いていくことができず、合流を断念して市中を逃げ惑います。
一方、ホテル襲撃部隊のガウマンは、ケネス率いる連邦軍の迎撃部隊と遭遇。新型MS「ペーネロペー」の圧倒的な性能と、民間人を盾にしても容赦なく攻撃してくる連邦軍の非情さに翻弄され、市街地に墜落、捕虜となります。
ハサウェイは目の前で墜落するMSを目撃。駆け付けたケネスのもとへギギが走っていく姿を見て、再びクェスとの別れを思い出します。ケネスは捕虜となったガウマンを尋問し、マフティーの正体に迫ります。
ガンダム空中受領とMS戦
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マフティー本隊に合流したハサウェイは、ケネスの有能さとペーネロペーの脅威を目の当たりにし、予定を変更して宇宙空間で「Ξガンダム」を直接受け取る強硬策を決定します。地球連邦軍の監視が強化され、当初の回収計画が困難になったためです。
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大気圏離脱用のシャトルで宇宙へ打ち上げられたハサウェイは、届けられたカーゴから「Ξガンダム」へ乗り込みます。「Ξガンダム」起動時、ハサウェイの脳裏にはアムロ・レイの声と幻影が響きます。
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ロケットの軌跡を追ってきたレーン駆るペーネロペーが、落下中のカーゴを発見し攻撃を開始。Ξガンダムは攻撃を受けながらもカーゴから離脱し、ペーネロペーと対峙します。ペーネロペーのコクピットには捕虜のガウマンが拘束されており、ハサウェイはレーンに「人質がいないと戦えないのか」と挑発。レーンは潔くガウマンを解放し、一騎打ちとなります。
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Ξガンダムとペーネロペーは互角の性能を見せますが、ハサウェイはベテランパイロットであるガウマンの助言(レーンへの)をヒントに、ビームライフルを囮にする奇策でペーネロペーを海上に叩き落とします。レーンは脱出に成功しますが、中破した機体を前に茫然自失。ケネスはギギの「幸運」のおかげでレーンが生還したと考えます。
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ハサウェイはロドイセアから脱出してきたマフティーの仲間と合流し、Ξガンダムと共に新たな拠点へと向かいます。一方、エンドロール後にはオエンベリで起きたテロリスト掃討作戦の失敗を示唆する英文が表示され、物語は続編へと繋がります。
物語の背景と世界観
宇宙世紀0105年の情勢
物語の舞台は、人類が生活圏を宇宙に移した「宇宙世紀」。地球の人口増加を解決するため、巨大な人工居住空間「スペースコロニー」が建設され、多くの人々が宇宙へ移民しました。スペースコロニーに暮らす人々は「スペースノイド」と呼ばれます。
しかし、地球に残った一部の特権階級は「地球連邦政府」を組織し、スペースノイドを植民地のように扱い、圧政を敷きました。この状況への反発が、一年戦争やその後のジオン残党との長い戦いを引き起こします。
『閃光のハサウェイ』の舞台となる宇宙世紀0105年は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた第二次ネオ・ジオン戦争、通称「シャアの反乱」から12年が経過しています。シャアの反乱は、スペースノイドへの弾圧を続ける地球連邦政府に対し、小惑星を地球に落下させて地上を人類が住めない環境にし、全人類を宇宙に強制移民させようとする過激な作戦でした。この反乱はアムロ・レイたちの活躍によって阻止されましたが、地球連邦政府の腐敗は改善されませんでした。
むしろ、戦争の終結とジオン勢力の弱体化により、地球連邦政府の権威は強まり、地球は特権階級のみが居住を許される「聖地」となりつつありました。多くのスペースノイドは地球への不法滞在を余儀なくされ、地球連邦政府の治安維持組織「刑事警察機構(通称:マンハンター)」による非人道的な「人狩り」が行われています。
このような腐敗しきった地球連邦政府に対し、反地球連邦政府運動「マフティー」が活動を開始します。マフティーは、政府高官を粛清することで地球の統治機能を麻痺させ、強制的に全人類を地球から宇宙へ移民させることを目指しています。彼らの活動は、過去のシャアの思想を受け継いでいると言えます。
主要な登場人物
ハサウェイ・ノア (マフティー・ナビーユ・エリン)
本作の主人公。地球連邦軍の伝説的な軍人ブライト・ノアの息子。表向きは植物観察官として地球へ向かいますが、その正体は反地球連邦政府運動「マフティー」のリーダー、「マフティー・ナビーユ・エリン」です。
約10年前に経験した「シャアの反乱」で、アムロやシャア、そしてクェス・パラヤとの出会いと別れを経験したことが、彼をマフティーとしての活動へと駆り立てる原動力となっています。過去のトラウマから、人前で飲み物を飲むことに抵抗を感じる描写も見られます。MS操縦技術にも優れています。
ケネス・スレッグ
地球連邦軍の大佐。マフティー殲滅部隊「キルケー部隊」の指揮官として地球に赴任します。
有能な軍人でありながら、気さくな一面と、マフティーや不穏分子に対しては非情な一面を併せ持ちます。ハウンゼン356便でのハイジャック事件でハサウェイ、ギギと出会い、彼らに強い関心を抱きます。特にギギの洞察力や振る舞いに魅力を感じ、「勝利の女神(キルケー)」と称します。
ギギ・アンダルシア
月から地球へ向かうシャトル「ハウンゼン356便」に乗り合わせた謎の美少女。周囲を惹きつける容姿と、子供のような純粋さ、そして大人顔負けの鋭い洞察力を持ち合わせています。
ハサウェイがマフティーであることにもいち早く気づいている様子を見せます。彼女の言葉や行動は、ハサウェイやケネスといった周囲の人物を突き動かしていきます。ニュータイプ的な感応能力を持っていると思われます。
レーン・エイム
地球連邦軍中尉。「キルケー部隊」に配備された新型MS「ペーネロペー」のパイロット。MS開発のテストパイロットとして優秀な成績を収めていますが、実戦経験は不足しており、自身の腕前や機体性能を過信しがちな一面があります。
部下からはやや侮られている描写も見られますが、ガウマンを人質にしないなど、潔い部分もあります。
ガウマン・ノビル
マフティーのMS部隊に所属するベテランパイロット。単独での飛行能力が低い量産型MSメッサーを巧みに操り、空中戦をこなす高い技量を持っています。
ホテル襲撃作戦で連邦軍に捕虜となりますが、ケネスによってペーネロペーのコクピットに拘束され、レーンとハサウェイの戦闘に立ち会うことになります。ベテランとして、レーンに助言を与える場面も見られます。
物語の舞台裏の解説
アデレード会議
地球連邦政府の閣僚が集まる重要な会議。地球への居住を特権階級に限定する法案が議題とされており、マフティーはこの会議を阻止し、閣僚を粛清することを目的としています。
マンハンター
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地球連邦政府の治安維持組織「刑事警察機構」の実働部隊。不法滞在するコロニー出身者を一方的に「人狩り」する非人道的な活動を行っており、地球の腐敗を象徴する存在です。彼らの使用するMSは脚部スラスターが塞がれるなど、人権弾圧のための威圧を目的とした改修が見られます。
偽マフティーとオエンベリ
ハウンゼンをハイジャックしたテロリストは、マフティーを名乗っていましたが、資金目当てであり、ハサウェイ率いるマフティー本隊とは無関係です。
彼らはオーストラリアのオエンベリという地域に集結した不穏分子の一味であり、マフティーの名を借りることで仲間や資金を集めようとしていました。
アナハイム・エレクトロニクス社
ガンダムシリーズでお馴染みの軍需産業。敵味方関係なくMSを製造・販売しており、本作でもマフティーと連邦軍双方に新型ガンダム(Ξガンダムとペーネロペー)を提供しています。
ハサウェイがΞガンダムを起動した際に生体認証された描写は、アナハイム社がハサウェイの生体情報を持っていたことを示唆しており、「死の商人」としての側面が強調されています。
キャラクターの深掘り
ハサウェイやギギ、ケネスなど、登場人物たちはそれぞれ、色々な思惑を持って行動しています。
特にハサウェイとギギはニュータイプなこともあって、お互いの心を読みつつ話していることもあり、会話の内容が飛んだり、抽象的な会話となっていたりと登場人物たちの心情が1度見ただけだと分かりづらくなっているので、以下より解説していきます。
ハサウェイのトラウマと成長
『逆襲のシャア』でクェスを失った経験は、ハサウェイに深い心の傷(PTSD)を残しています。ギギの言葉や行動にクェスの面影を重ねたり、人前で飲み物を飲むことに抵抗を感じたりする描写は、そのトラウマを示しています。
しかし、テロリストに立ち向かい、ギギを危険から守ろうとする彼の行動は、アムロやシャア、そしてクェスから受け継いだ「優しさ」や「情熱」の現れであり、少年時代からの成長を感じさせます。
ケネスの二面性
ケネスは、部下やハサウェイ、ギギの前では気さくな態度を見せますが、マフティー殲滅のためには民間人の犠牲も厭わない非情さを持っています。彼はマフティーの思想に一定の理解を示しながらも、軍人としての任務を遂行することに徹します。
ギギの存在に惹かれつつも、彼女を利用しようとする計算高い一面も見られます。
クェスの幻影とアムロの声
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ギギの言動やMS戦の最中に、ハサウェイはクェスの幻影やアムロの声を聞きます。これらはハサウェイの心理描写であり、彼が過去の出来事や人物に強く影響を受けていることを示しています。
特にアムロの声は、死に直面した際に過去の言葉を思い出し、自身を鼓舞しているかのように描かれています。
分かりづらいキャラ描写
飲めないドリンク
ハサウェイが劇中で何度か飲み物を飲もうとして、結局飲めない描写があります。これは彼のPTSD、特に『逆襲のシャア』でクェスやチェーン・アギとの悲劇的な経験が影響していると言われています。
人前で無防備になることへの抵抗や、過去の出来事がフラッシュバックすることを示唆しています。
動揺したギギ
ハサウェイ「”言葉で人を殺すことができるということは、覚えていてほしいな”」
ギギ「”そんな、そんなことは絶対に嫌だ!私…。私、そういうんじゃないよ”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
このハサウェイの忠告に対し、かなり動揺するギギ。
なぜなのか、それはこの時点でギギはハサウェイの正体を知って、その上でハサウェイのことも気に入ったことで舞い上がっています。そんな時に、ハサウェイはギギに他の人にハサウェイの秘密を話せばハサウェイは死ぬということを伝えたのです。
つまり、「そんなこと(ハサウェイが死ぬこと)は絶対に嫌だ!」、「そういうんじゃない(自分は秘密を話すような女じゃない)」と焦っているのだと思われます。
ギギが裸を見られて怒った理由
同じ部屋になってしまったハサウェイとギギ。ラッキースケベ的に裸を見られてギギはハサウェイに怒りますが、ただ裸を見られたから怒ったわけではありません。
これは端的に説明すると、ギギの思惑にハサウェイが乗らなかったから怒ったのです。
ハサウェイを気に入っているので、自分の着替えシーンを見せて男女の関係だということを意識させようとしていました。
しかし、ハサウェイはギギの思惑を理解した上で乗りませんでした。さらに「そんな女は嫌い」とまで言い返します。まだ知り合ったばかりのギギを信用しておらず、マフティーとしてのやらなければいけないこと、そしてハサウェイにはケリアという恋人もいます。
その後、ハサウェイの正体を知っているかもしれないギギを敵に回す可能性に気づき、そこまで言ったのはミスしたかもしれないということも理解し、少し落ち込みます。
そして、ギギは自分の思惑に乗らなかったハサウェイに対して、少々の怒りと、小賢しい計画した自分が恥ずかしくなって部屋に閉じこもったのです。
タクシー運転手との会話
ハサウェイ「”マフティーは1000年先のことを言っているようだけど?”」
タクシー運転手「”暇なんだねえ、その人さ。暮らしって、そんな先考えている暇はないやね”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
というやり取りは、遠い理想を語るハサウェイと、日々の生活に精一杯で先のことを考える余裕もない一般市民との間の大きな隔たりを示しています。
これは、マフティーの活動が一部の理想主義者の自己満足に過ぎないのではないか、という問いにもなっています。
さっきのごちゃごちゃした話もスッキリさせてよ
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空襲が始まった後、このエレベーター内の会話ですが、第1部の作中でも一番抽象的で意味が分かりづらいセリフとなっています。ですが、このセリフは意味が分かるとハサウェイの自己矛盾が非常に分かるようなセリフにもなっています。
ギギ「”どうして、私に聞いたの?”」
ハサウェイ「”君の勘に賭けたのさ”」
ギギ「”それなら、さっきのごちゃごちゃした話もスッキリさせてよ”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
まず、「どうして私に聞いたの?」は「なぜエレベーターに乗っても大丈夫なのかを私に聞いたの?」ということです。エレベーターに乗っても大丈夫なのかは直接聞いておらず、ハサウェイがギギに顔を向けた時にニュータイプ的な能力で判断しました。
そして、ギギの質問の意味は、ギギはハサウェイがマフティーだと認識しているため、このテロの攻撃タイミングも分かっているから聞く必要ある?という意味になります。
このセリフのハサウェイの返答は、すっとぼけて君の勘に賭けたと言いました。
ギギ「”マフティー・エリンってあなたでしょうに。”」
ハサウェイ「”マフティーは組織だよ。一人であるわけがないだろ。”」
ギギ「”嘘。”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
そして、避難するための部屋を出る前に、上述のような会話をしていました。つまり、ギギはハサウェイはマフティーだと認識した上で、「私の勘を信じるなら、いつまでもごちゃごちゃした事を言って誤魔化さずに自分の正体を認めてよ」という意味になります。
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さらに、この「”ごちゃごちゃした話もスッキリさせてよ”」というセリフには、もう一つ意味があります。
ギギ「”マフティーのやり方正しくないよ。”」
ハサウェイ「”他のやり方があるならば、教えてほしいとマフティーは聞くよ。”」
ギギ「”あるよ。絶対に間違わない独裁政権の樹立よ。”」
ハサウェイ「”しかし、それができる人間がいるとすれば、それは神様だよ。”」
ギギ「”じゃあ、あなたが神になればいい。”」
ハサウェイ「”そんな人が出てくる頃は人間全体が神になっているよ。”」
ギギ「”それがニュータイプってこと?”」
ハサウェイ「”そんなのはいないよ。学校で教えられたろ?”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
これは、ギギと二人でホテルの同室になった時の問答ですが、世界を変えるには独裁政権を作ってハサウェイがすれば?というギギの提案に対し、そんなことは「神様にしかできないし、神様はいない」とハサウェイは答えてはぐらかします。
ギギから見ると、「この問答でははぐらかしたのに、私のニュータイプ的な勘は信じるんだ」と感じ、”ごちゃごちゃした話”は「ニュータイプの存在に希望を持っているならテロ活動をしなければいいのに、なぜするのか説明してよ」という意味になります。
これらの会話はハサウェイの内にある、ニュータイプへの希望(アムロの思想)と人類への絶望(シャアの思想)によって、自己矛盾を起こしていることを示すセリフとなっています。
やっぱり怖い事するよ、あなた
上述のエレベーター内でギギが言ったセリフですが、ここだけを切り取ると「テロ活動をするんでしょ?」と聞こえるようなセリフです。
ギギ「やっぱり怖い事するよ、あなた。」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
しかし、このセリフの本意はハサウェイが使命のためなら自分の命を投げ出せるほどの人間だと感じているからでしょう。いくら世界をより良いものにするためのテロ行為とはいえ、ハサウェイ自身がいるホテルを仲間に狙わせるのは怖いということです。
そして、そのような人間は使命のためならどんなことも厭わない、という意味、そして「今は私を助けているけどいざ使命が重要になったら、私を見捨てて任務を優先するでしょう?」というギギにとっての怖い事の意味も含まれていると思われます。
ギギは敵なのか?
ハサウェイ「敵を抱え込んでいるんだ、色々とな!」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
ギギとともに逃げている時、マフティーの仲間であるエメラルダに対し、言ったセリフです。
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ギギやケネスなどの人間関係はダバオでできたハサウェイの個人的な人間関係であり、マフティーの仲間たちにはそのような事情は知りません。そんな知らないエメラルダからすると、「一般人を連れている場合なのか?」と訝しむのも当然のことです。
訝しむエメラルダに対し、端的に説明するためにもハサウェイは「ただ一般人ではない、色々と事情があるんだよ」という、意味のセリフとなっています。
ケネスがマフティーの正体に気づいた理由
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ハサウェイがマフティーの仲間たちと合流し、ギギは何も言わずにどこかに行ったハサウェイに対し、少し不機嫌になりながらケネスと話しているシーンです。
ケネス「”いてくれていいんだ。君が勝利の女神だという勘はあるんだ。”」
ギギ「”こじつけだわ。”」
ケネス「”戦場にいる人間は験を担ぐんだよ。”」
ギギ「”そうかなぁ?でも、ハサウェイは私を避けていたけど。”」
ケネス「”あいつは軍人になりきれなかった人間だからな。それで…。ギギ!今何と言った!?”」
ギギ「”えっ。”」
ケネス「”君はハサウェイから何か聞いているな?いや、ハサウェイに何を感じていた!?”」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
このセリフの流れで気付いたことを読めます。
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ケネスが言った「軍人は験を担ぐんだよ」というセリフに対し、ギギは「ハサウェイは私を避けていたよ」と返しました。ここにケネスは引っかかります。ケネスからすると、軍人ではないのにハサウェイの話をギギが急にしたから、ハサウェイに何かを感じていたことを聞きました。
この時点でケネスはハサウェイのことを怪しく感じるものの、マフティーの一員かなと推測しているくらいです。その後、ハイジャックされた時のハサウェイの行動など、色んな要素をケネスに考えた結果、ハサウェイはマフティー・ナビーユ・エリンだと認識するようになりました。
原作小説では、もっと後の時点で気づくので、オリジナル展開になっているのもわかります。
ハサウェイに言い寄った女性は誰なのか
「Ξガンダム」を無事に手に入れた後、支援船の「ヴァリアント」内で仲間たちと話している中、オレンジ色のショートカットの髪の女性についてです。
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この女性は「ケリア・デース」という、地球の香港にいたハサウェイの恋人です。シャアの反乱の後、うつ病を患っているハサウェイに献身的に寄り添ってくれています。ハサウェイがマフティーへ参加するきっかけを作った人でもあります。
原作小説だと、うつ病を看病してくれているのは同じですが、友達以上恋人未満という関係で、マフティーへ参加するきっかけにもなっていません。
さらに、ハサウェイはマフティーのリーダーへと上り詰めていくこととギギと出会うことで、ケリアとの関係が疎遠になっていくのですが、劇場版では上述の通り、恋人となっているのでケリアとの関係はより深く描かれそうです。
ハサウェイが壊れていることがわかる画像
ハサウェイのサイン
「公式X」で公開されたハサウェイ、ケネス、ギギのサインです。
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右下がハサウェイのサインですが、「ハサウェイ・ノア」という綴りの「Hathaway Noa」の「A」という文字、すべて違う書き方で「A」を書いています。
つまり、端的に説明するとハサウェイの精神は壊れています。パッと見のハサウェイは普通の人間だと認識できるのに、こうなっているのもシャアの反乱以降のうつ病に始まり、徐々に壊れていったのでしょう。
村瀬修功監督のインタビュー記事において答えられている、ハサウェイ自身も実際は壊れているのに自分はまともだと思っているのも、こういう描写で描かれています。
【#閃光のハサウェイ モニター紹介 第6回】
宣誓供述書からハサウェイとギギ、ケネスのサインです。ハサウェイのサインは彼の「壊れている」感を出すためにカリグラファーの三戸美奈子さんに練り上げて頂きました。モニターではないですが是非ご紹介したかったので……!(貼り込み素材も担当:笠岡) pic.twitter.com/mXefwvVCh8— 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ (@gundam_hathaway) July 16, 2021
アーセナルベースのクェスのカード
アーケードカードゲームである「機動戦士ガンダム アーセナルベース」のクェスのカードも、有名なハサウェイが壊れていることがわかる画像です。
まず、ハサウェイの視点の画像であることを念頭に置いてください。ギギが鏡に映っていて、こちら側にはクェスがこちらを見ています。
つまりこれは、ギギがいることから「閃光のハサウェイ」の時代になっているのに、鏡像がクェスではなく、実像がクェスになっているので、ハサウェイから見てギギはクェスとして見えています。
主人公には、今作のヒロインが死んでしまった前作のヒロインに見えているという、死者に魂を引っ張られている典型例となっています。
さらに、ハサウェイのカードもあるのですが、こちらは実像は「逆襲のシャア」の頃のハサウェイなのに、ガラスに映っている鏡像は「閃光のハサウェイ」の頃のハサウェイとなっています。
これもハサウェイからすると「逆襲のシャア」の頃から時間が進んでいないのだと思われます。それほど、あの事件はハサウェイにとって呪いになるような事件だったのでしょう。
モビルスーツの秘密
Ξガンダムとペーネロペー
本作の主役MS。どちらもアナハイム社製で、小型化した「ミノフスキー・フライト・ユニット」を搭載した第5世代MSです。MFFにより、従来のMSでは不可能だった大気圏内での高度な飛行能力を有します。
また、サイコミュで誘導されるファンネルミサイルを主武装としています。「Ξガンダム」はペーネロペーの改良発展型で、ミノフスキーフライトを内蔵しているためより洗練されたフォルムをしています。
ペーネロペーは「フィックスド・フライト」というユニットを装備している「オデュッセウスガンダム」のことであり、フィックスド・フライトをパージすると中身のオデュッセウスガンダムが現れます。
アナハイムは何をやりやがったのか?
ハサウェイ「モビルスーツ!?あれが新型という奴なら、アナハイムはやりやがったってことだ!」
出典: 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ
ハサウェイがギギとともに逃げている時、連邦軍の新型MS「ペーネロペー」が飛んでいるのを見て、言ったセリフです。
まず、アナハイムとは「アナハイム・エレクトロニクス社」という、月にある宇宙世紀におけるモビルスーツを製造している会社です。
物語後半でハサウェイが乗った「Ξガンダム」、そして連邦軍の新型の「ペーネロペー」のどちらもアナハイムが開発したモビルスーツであり、どちらも「ミノフスキー・フライト」というもの搭載しています。
つまり、「Ξガンダム」から「ペーネロペー」もしくは、「ペーネロペー」から「Ξガンダム」への、ミノフスキーフライトの技術共有や技術流用があったかもしれないため、同じようなモビルスーツを連邦軍にもテロリストにも売って戦争をコントロールしようとしているのではないかということです。
量産機の限界
マフティーのメッサーや連邦軍のグスタフ・カール、ジェガンといった量産機はMFFを搭載しておらず、大気圏内での飛行はバーニアやリフティングフレアに頼るため、自在な空中機動はできません。
ホテル襲撃時のMS戦では、落ちながら戦うメッサーと自在に空を舞うペーネロペーの対比が、両機の性能差を強調しています。
ファンネルミサイル
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ミノフスキー粒子が散布された宇宙世紀では、電波誘導が困難ですが、サイコミュ技術によって遠隔操作・誘導が可能な兵器です。Ξガンダムとペーネロペーが装備しており、戦闘における重要な要素となります。
ハサウェイはファンネルミサイルを回避するために水面スレスレを飛行したり、水しぶきで敵の視界を遮る戦術を用いました。
原作小説の結末と映画版の展望(ネタバレ含む)
※ここからは原作小説の結末に触れます。映画版の今後の展開を一切知りたくない方は読み飛ばしてください。
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、富野由悠季氏の原作小説を基にした全3部作として制作されています。第1部で描かれた内容は、原作小説の上巻にあたります。
関連作品と見る順番
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、宇宙世紀シリーズの作品であり、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の直接的な続編です。そのため、本作をより深く楽しむためには、過去の関連作品を視聴しておくことが推奨されます。
特に最低限見ておきたいのは、本作の直接的な前作である『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』です。ハサウェイの過去や彼がマフティーとなった理由、そしてアムロやシャアといったキーパーソンとの関係性を理解する上で非常に重要です。
さらに、宇宙世紀の大きな流れや、ハサウェイの父ブライト・ノアの活躍を知るためには、以下の作品もおすすめです。
- 『機動戦士ガンダム』 (TVシリーズまたは劇場版3部作)
- 『機動戦士Zガンダム』 (TVシリーズまたは劇場版3部作)
- 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
これらの作品を見ることで、宇宙世紀の世界観や登場人物の背景、MSの技術発展の歴史などが理解でき、『閃光のハサウェイ』の重層的な物語をより深く味わうことができるでしょう。
これらの過去作品や『閃光のハサウェイ』は、様々なVOD(動画配信サービス)で配信されています。サービスによっては、多くの宇宙世紀作品を網羅している場合もあるため、まとめて視聴するのに便利です。
まとめ
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』第1部は、緻密に描かれた世界観、魅力的なキャラクター、そして迫力あるMS戦闘を通して、腐敗した地球連邦政府とそれに対抗するマフティーの戦いを鮮烈に描き出しました。
主人公ハサウェイ・ノアの抱える理想と現実のギャップ、過去のトラウマ、そして彼を取り巻くギギやケネスといった個性的な人物たちとの関係性が物語を深く掘り下げています。
本作は、単なるロボットアニメではなく、宇宙世紀という時代背景における人間の業や社会の歪みを描いた、まさに「機動戦士ガンダム」シリーズの系譜を受け継ぐ作品と言えるでしょう。特にMS戦闘シーンにおける作画や演出、そして細部へのこだわりは、劇場作品ならではの完成度を誇ります。
原作小説の衝撃的な結末を知っているファンも、映画版がどのような展開を迎えるのか、大きな期待を寄せている作品です。ぜひ、この記事を参考に『閃光のハサウェイ』の世界を深く知り、今後の物語の行く末を見守ってください。
記事の間違いやご意見・ご要望はこちらへお願いします。