『魔法少女まどか☆マギカ』に登場する「ワルプルギスの夜」は、TVシリーズで暁美ほむらが何度挑んでも倒せなかった謎多き魔女です。
その正体については長年さまざまな説がありましたが、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』では、マルグリートや「名前のない上級生/ワス」、そして「すべての魔女の始まりの場所」とされる名塚底根が登場したことで、その成り立ちが大きく掘り下げられました。
本記事ではワルプルギスの夜の正体を中心に、マルグリートやワスとの関係、名塚底根が生まれた理由、「舞台装置の魔女」という名称、強さや元ネタ、『マギアレコード』『おりこ☆マギカ』『scene0』など他作品での登場について解説・考察します。
この記事は『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズおよび『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の重大なネタバレを含みます。
ネタバレ防止のお願い
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〈ワルプルギスの廻天〉をご鑑賞いただく
皆さまへ、あらためてのお願いです。ネタバレを含む投稿につきましては
【9/12(土)0:00】までご配慮いただくよう、
ご協力をお願いいたします。#まどかマギカ pic.twitter.com/LMbdP1q4M1— 魔法少女まどか☆マギカ (@madoka_magica) August 27, 2026
ワルプルギスの夜の正体を簡単にまとめる
まず、ワルプルギスの夜について現在分かっていることと、本記事での考察を簡単にまとめます。
項目 |
解説・考察 |
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正体 |
公式では「複数の魔女の集合体」 |
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正式名称 |
舞台装置の魔女 |
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本名 |
不明 |
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性質 |
無力 |
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マルグリートとの関係 |
ワルプルギスの夜誕生の中心となった少女 |
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名塚底根との関係 |
マルグリートが少女たちの名前や個性を残そうとしたことから生まれた仕組みと考えられる |
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ワスの正体 |
ワルプルギスの夜が人の姿を取って現れた存在と考えられる |
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ワス=マルグリート? |
劇中では強く結びつけられるが、「歴史上のマルグリート一人=集合体全部」という意味ではないと考えられる |
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ほむらとの関係 |
ワスはほむらと酷似し、二人は「誰かを救おうとして自分を失った者」として対になっている可能性 |
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なぜ強い? |
多数の魔女・魔法少女の絶望が集積した集合体だからと考えられる |
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名前がない理由 |
名塚底根以前に個を失った少女たちの集合体だからと考えられる |
ワルプルギスの夜の正体は「複数の魔女の集合体」
ワルプルギスの夜について、まず押さえておきたいのが「特定の一人の魔法少女がそのまま魔女になった存在ではない」という点です。
TVシリーズ当時の公式「魔女ギャラリー」では、舞台装置の魔女について「誰も知らない誰かたちの集合体」と説明されていました。さらに『ワルプルギスの廻天』公式サイトでも、ワルプルギスの夜は「複数の魔女の集合体」と明記されています。
そして『ワルプルギスの廻天』本編でも、ほむらはその存在を次のように表現しています。
ほむら『複数の魔女の融合体、想像を絶する呪いの集積。人呼んで、ワルプルギスの夜。』
つまり、現在もっとも確実に言えるワルプルギスの夜の正体は、多数の魔女と呪いがひとつになった特殊な集合体です。
正式には「舞台装置の魔女」
「ワルプルギスの夜」は通称であり、公式での名称は「舞台装置の魔女」です。その性質は「無力」で、巨大な災厄として世界を移動し続ける存在として描かれています。
TVシリーズでは、ほむらが大量の兵器を投入しても倒すことができませんでした。公式でも単独の魔法少女では対処しきれない超大型の魔女とされており、通常の魔女とは明らかに規模が異なります。
他の『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズでも、たくさんの魔法少女の力を借りてやっと倒せた作品や、いずれかの魔法少女の犠牲によって撃退できた作品など、どちらにせよ強大な存在として描かれています。
『ワルプルギスの廻天』で「集合体」が生まれた理由
「集合体」という設定自体はTVシリーズ当時から存在していました。しかし、「なぜ複数の魔女がひとつになったのか」「その中心に誰がいたのか」は長らく分かっていませんでした。
『ワルプルギスの廻天』では、その謎に大きく関係する少女としてマルグリートが登場します。本作で描かれた過去を踏まえると、ワルプルギスの夜は複数の魔女が偶然集まったものではなく、マルグリートが魔法少女たちを救おうとした結果として生まれた存在だと考えられます。
ただし、「ワルプルギスの夜=マルグリート一人」としてしまうと、「複数の魔女の集合体」という公式設定とは噛み合いません。
マルグリートはワルプルギスの夜の中心となった少女であり、彼女と、彼女が救いきれなかった多くの少女たちが混ざり合った存在がワルプルギスの夜と考えるのが分かりやすいでしょう。
マルグリートとは?ワルプルギスの夜の中心となった少女
『ワルプルギスの廻天』によって、ワルプルギスの夜を考えるうえでもっとも重要な人物の一人となったのがマルグリートです。
まどかより前に魔法少女を救おうとした少女
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マルグリートは、苦しんでいる魔法少女たちを救おうとした少女です。その在り方は、鹿目まどかと重なります。つまり、まどか以前にも「魔法少女を救いたい」と願った少女が存在していたことになります。
まどか『すべての魔女を生まれる前に消し去りたい。すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女を、この手で。』
出典: 魔法少女まどか☆マギカ 12話
しかし、宇宙の法則そのものを書き換えて円環の理となったまどかとは違い、マルグリートは目の前の魔法少女たちが抱えている苦しみや呪いを、自ら引き受けることで救おうとしました。
ところが、救いを求める少女が増えれば増えるほど、マルグリート一人では救済が追いつかなくなっていきます。
昔の魔法少女は名前も個性も失っていた?
ここで重要になるのが、『ワルプルギスの廻天』で描かれた当時の魔法少女たちです。
現在知られている魔女には、「オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ」、「シャルロッテ」、「ホムリリィ」などそれぞれ名前があり、固有の姿や性質、結界、使い魔を持っています。
しかし、マルグリートの時代には、絶望した魔法少女たちは魔女ではなく、「誰だったのか」さえ分からない「呪いの塊」のような存在になってしまっていたと読み取れます。
それは単に少女が死亡する以上に残酷です。彼女がどんな人間で、何を願い、どのように生きていたのかまで失われてしまいます。そこでマルグリートが行ったのが、彼女たちを「誰か」として残すことだったのではないでしょうか。
名塚底根はマルグリートから生まれた?
『ワルプルギスの廻天』公式サイトでは、名塚底根(なづかそこつね)は「すべての魔女の始まりの場所」と説明されています。劇中の描写から考えると、この名塚底根の誕生にはマルグリートが深く関係しています。
名前を失う少女たちに「個」を残した
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マルグリートは、救えなかった魔法少女たちが名も個性も失って消えてしまわないように、彼女たちを一人ひとり「誰か」として残そうとします。その結果生まれたのが、現在知られている「魔女」という存在だったと考えられます。
魔女になれば少女として生き続けられるわけではありません。しかし少なくとも、名前があり、姿があり、性質があり、「その少女が確かに存在していた」という痕跡が残ります。
この「名前」というテーマを考えるうえで思い出されるのが、過去に公開された『コンセプトムービー』の言葉です。
ほむら「それは、誰かに名前を呼ばれること。」
まどか「それは、誰かの名前を呼ぶこと。」
このセリフでは、「名前を呼ぶ/呼ばれる」という行為が「幸せ」と結びつけられています。
『ワルプルギスの廻天』でも、名前を失った少女と、名前を残そうとするマルグリートの物語が描かれます。名塚底根とは、そうした魔女たちの名前や個性、存在を保持や保存するための仕組み・場所なのではないでしょうか。
ワルプルギスの夜だけは名塚底根の救済が間に合わなかった?
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ここで重要なのが、ワルプルギスの夜と名塚底根の関係です。
マルグリートが名塚底根という仕組みを完成させたことで、それ以降の魔女は名前や個性を持つことができた。しかし、それより前に絶望し、すでに個を失っていた少女たちには間に合わなかったのではないでしょうか。
そしてマルグリート自身も、彼女たちの呪いを抱え込み続けた末に、その中へ飲み込まれていきます。
つまり、「救えなかった名もなき魔法少女たち+彼女たちを救おうとしていたマルグリート=ワルプルギスの夜」という構造です。
この考え方なら、なぜワルプルギスの夜だけが「本名不明」であり、「誰も知らない誰かたちの集合体」なのかも説明できます。
魔女に名前を残す仕組みを作ったマルグリート自身が、その仕組みによって名前を得るより先に、名もなき少女たちと混ざり合ってしまったのです。
ワスの正体は?
『ワルプルギスの廻天』に登場する「名前のない上級生/ワス」も、ワルプルギスの夜の正体を考えるうえで欠かせません。
公式プロフィールでは、ワスは「かつて円環の理に導かれたが、名塚底根を通って現世に舞い戻った少女」とされています。さらに「誰もその名前や正体を知らない」こと、ほむらとそっくりな顔を持つことも明記されています。
ワスはワルプルギスの夜が人の姿を取った存在?
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劇中での描写まで踏まえると、ワスはワルプルギスの夜が人の姿を取って現れた存在と考えるのがもっとも自然です。
ワルプルギスの夜は円環の理によって救済されました。その後、名塚底根を経由して再び現世へ戻ってきたのがワスだと考えれば、
「マルグリートと名もなき少女たち → ワルプルギスの夜 → 円環の理による救済 → 名塚底根 → ワス」という流れになります。
かつてマルグリートが、他の少女たちに「個」を残すために生み出したと考えられる名塚底根。その仕組みを今度は自分自身が通ることで、集合体だったワルプルギスの夜が再び一人の少女の姿を得たとすれば、非常に皮肉でありながら美しい構造です。
ワス=マルグリートなのか?
この問題を考えるうえでもっとも重要なのが、終盤のワスとまどかのやり取りです。
ワス『マルグリート、愛しい人。私は誰なのか教えて。』
まどか『あなたの名はマルグリート。もう大丈夫。救われていい。』
この会話だけを見れば、「ワス=マルグリート」と考えたくなります。
しかし、その後には魔法少女だった頃のマルグリート本人と見られる存在も別に現れ、まどかは両者を抱きしめています。そのため、ワス=歴史上のマルグリート本人と単純な等号で結ぶのは難しいでしょう。
ワスは、マルグリートを中心として多くの少女たちが混ざり合った「ワルプルギスの夜」という集合体が、一人の存在として形を得たもの。そして最後に「マルグリート」という名前を与えられたと考える方が、劇中描写と「複数の魔女の集合体」という設定を両立できます。
なぜワスはまどかを「マルグリート」と呼んだ?
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本作序盤で、ワスはまどかを「マルグリート」と呼びます。
単純に人違いをしていたとも考えられますが、本作における「マルグリート」は、ただ一人の少女の名前以上の意味を持っている可能性があります。歴史上のマルグリートとまどかには、「魔法少女を救いたい」という共通点があります。
そのためワスにとって「マルグリート」とは、「魔法少女を救う者」であり、「自分たちの名前を呼んでくれる者」であり、「自分を「誰か」として認めてくれる者」という意味も持っていたのではないでしょうか。
だからこそ、鹿目まどかもまたワスには「マルグリート」に見えたのかもしれません。
最後にはワス自身が「マルグリート」になる
マルグリートは、生前に名も個性も失っていく少女たちへ、名前を残そうとしました。しかし、最後には彼女自身がワルプルギスの夜という集合体となり、自分の名前を失ってしまいます。
そんな彼女が長い年月を経て、今度は自分から「私の名は?」と問いかける。そして、まどかが「あなたはマルグリート」と答える。誰かの名前を残し続けていた少女が、最後には自分の名前を呼んでもらう。
先ほどの『コンセプトムービー』にあった「誰かに名前を呼ばれること」という幸福が、ここでマルグリート自身へ返ってきたと読むこともできます。
ワルプルギスの夜が見滝原に出現する理由
ワルプルギスの夜がどの宇宙でも必ず見滝原に現れる理由は、至極単純で「まどかに自身たちを呪いから救済してほしいから」であると考えられます。
ただ名前を呼んで欲しくて、自分が誰かを教えて欲しくてまどかを探し続けており、それは偶然、結果的にほむらに時間遡行をさせ、まどかに因果を集約させることとなり、魔法少女としての力が強まることに繋がります。
そして、まどかがTVシリーズの最終回で願った「過去から未来、すべての魔法少女を救いたい」という願いを叶えられるほど強力になり、ワルプルギスの夜もマルグリートも救われたのでしょう。
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そんな救われた自分の存在を思い出させてくれた唯一の存在を、ほむらは自分勝手に「まどかの幸せのため」、「愛しているから」などといった理由で奪い取られれば、奪い返しに行くのは当然です。
ワルプルギスの夜にはなぜ名前がない?
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ワルプルギスの夜は、他の魔女と違って本名が明らかになっていません。
TVシリーズ当時から「誰も知らない誰かたちの集合体」とされていましたが、『ワルプルギスの廻天』によって、この設定にも意味が見えてきました。名塚底根によって魔女が名前や個性を持つようになったのだとすれば、それ以前に絶望した少女たちは自分が「誰だったのか」を残すことができません。
そしてマルグリートも、彼女たちと混ざり合ってしまった。
だからこそワルプルギスの夜には、「オクタヴィア」や「シャルロッテ」のような一人の魔女としての名前がありません。名前を持てなかった少女たちの集合体だから、ワルプルギスの夜にも本名がない。
『ワルプルギスの廻天』によって、TVシリーズ当時から存在した「本名不明」という設定にも、新しい意味が与えられたのかもしれません。
なぜワスはほむらと同じ顔をしている?
ワス最大の謎のひとつが、暁美ほむらと酷似した姿です。
公式プロフィールにも「ほむらとそっくりな顔を持つ」と明記されていますが、なぜその姿なのかまでは説明されていません。
マルグリートとほむらは似た存在
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マルグリートとほむらには大きな共通点があります。
マルグリートは、多くの魔法少女を救うために自分自身を犠牲にしました。一方、ほむらもまどかを救うために世界そのものを書き換え、自らを「悪魔」とする道を選びました。
対象や方法は違っていても、「誰かを救いたい → そのために自分一人ですべてを背負う → 最後には自分自身まで失っていく」という構造はよく似ています。
そのためワスがほむらと同じ顔をしているのは、血縁や同一人物であることを示しているのではなく、マルグリートとほむらが物語上の鏡像だからと考えられます。
「ごきげんよう。悪魔さま」の意味
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ワスとほむらの関係を象徴するのが、ワスがほむらへ向ける言葉です。
ワス『ごきげんよう。悪魔さま。』
この言葉は作中で繰り返されますが、序盤と終盤では印象が変わります。
当初はほむらを敵として挑発するようにも聞こえます。しかし、終盤ではワス自身がまどかの正体や、自分が求めていたものを知った後に同じ言葉を口にします。
同じように誰かを救おうとして自分自身を失った者同士だからこそ、ワスはほむらを単なる敵ではなく、自分と似た少女として見ていたのかもしれません。「ごきげんよう」という別れの言葉には、最後にはほむらの行く末を案じる意味まで含まれていたとも考えられます。
『ワルプルギスの廻天』でワルプルギスの夜は救われた?
TVシリーズにおけるワルプルギスの夜は、ほむらたちにとって「倒すべき災厄」でした。
しかし『ワルプルギスの廻天』によって、その中には、かつて誰かを救おうとしたマルグリートと、名前さえ失ってしまった多くの魔法少女たちが存在していたことが見えてきます。
つまりワルプルギスの夜も、本来は円環の理によって救われるべき魔法少女たちの集合体だったことになります。
ほむらにとって、何度時間を繰り返しても倒せなかった最大の敵。その正体もまた、まどかに救われるべき少女たちだったということです。
「名前を呼ぶ」ことで最後にマルグリート自身も救われた?
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マルグリートは、生前に多くの少女たちを救うことはできませんでした。
それでも、彼女たちが誰だったのかまで失われないように「名前」を残そうとした。それが名塚底根と魔女という仕組みにつながったと考えられます。ところが、マルグリート自身はワルプルギスの夜という集合体となり、自分の名前を失ってしまいます。
その彼女が長い年月を経てワスとして戻り、まどかから「あなたはマルグリート」と名前を与えられる。これは、彼女にとって大きな救済だったのでしょう。
そして、自分自身を取り戻したワスは、最後にほむらへこう告げます。
ワス『まどかを解放してあげて、暁美ほむら。』
ここで注目したいのが、ワスが「暁美ほむら」と名前を呼んでいることです。
自分自身が名前を呼ばれることで「誰か」へ戻ったワスが、今度はほむらの名前を呼び、彼女の背中を押す。名前を呼ばれることで救われた少女が、今度は別の少女の名前を呼ぶ。
『コンセプトムービー』の「誰かに名前を呼ばれること」、「誰かの名前を呼ぶこと」という言葉まで含めると、この場面はマルグリートの救済がほむらへ受け渡された瞬間とも考えられます。
ワルプルギスの夜=暁美ほむら説はどうなった?
かつては、ワルプルギスの夜の象徴である歯車とほむらの時を操作する盾の中身の歯車と似ていること、「無力」「回り続ける愚者の象徴」という性質がほむらのループと類似することから、「暁美ほむらがワルプルギスの夜の元の魔法少女である」という説が存在しました。
しかし、「魔法少女まどか☆マギカ ポータブル」というゲームでほむらの魔女化した姿「Homulilly(此岸の魔女)」が登場したことで一度は否定されました。
ところが、『叛逆の物語』で登場した「Homulilly(くるみ割りの魔女)」が、ワルプルギスの夜と酷似した巨大なスカートや顔の上半分がない外見をしていたことから、再びほむらとの関連性が一部で論じられるようになりました。
他作品に登場するワルプルギスの夜
ワルプルギスの夜はTVアニメ本編や「ワルプルギスの廻天」だけでなく、複数の『まどか☆マギカ』関連作品にも登場しています。
『マギアレコード』のワルプルギスの夜
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『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』では、ワルプルギスの夜が物語終盤の大きな脅威として登場します。
神浜市へ向かったワルプルギスの夜に対し、環いろはたち神浜の魔法少女に加えて、まどかやほむらたち見滝原の魔法少女も戦いへ関わります。
TVシリーズではほむらがほぼ一人で迎え撃っていた存在に対し、『マギレコ』では多数の魔法少女が力を合わせて立ち向かうという異なる展開が描かれています。
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マギウスはワルプルギスの夜を「エンブリオ・イブ」に食べさせ、完全な魔女にすることですべての魔法少女を救うという野望を達成しようとしました。しかし、多くの魔法少女がワルプルギスの夜と戦う中で、アルティメットまどかの介入によって、ついに倒されることになります。
『魔法少女おりこ☆マギカ』のワルプルギスの夜
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『魔法少女おりこ☆マギカ』では、ワルプルギスの夜そのものが物語のラスボスとなるわけではありませんが、見滝原へ襲来する重大な災厄として背景に存在しています。
美国織莉子の未来予知と行動には、ワルプルギスの夜の襲来と、その中で鹿目まどかが魔法少女になる未来が深く関係しています。
本作では正体を掘り下げる存在というより、まどかたちの運命を大きく動かす避けられない災厄として機能しています。
『魔法少女まどか☆マギカ scene0』のワルプルギスの夜
『魔法少女まどか☆マギカ scene0』も、ワルプルギスの夜を語るうえでは重要です。
『scene0』では、愛生まばゆがほむらの時間遡行に巻き込まれ、TVシリーズでは描かれなかった繰り返しの世界が描かれます。その中で、まばゆも何度もワルプルギスの夜へ立ち向かうことになります。
TVシリーズでは基本的にほむらの視点からしか分からなかった時間遡行を補完することで、ワルプルギスの夜がどの時間軸でも見滝原へ現れ、ほむらたちの運命を大きく左右していたことが分かります。
その他の作品でも登場
ワルプルギスの夜は、『魔法少女まどか☆マギカ ポータブル』『The different story』『ほむらリベンジ!』などでも、見滝原を襲う重大な脅威として登場・言及されています。
また、『The Battle Pentagram』『魔法少女まどか☆マギカ オンライン』『Magia Exedra』などのゲーム作品にも登場しています。
ただし、これらはワルプルギスの夜の正体そのものを理解するうえで大きな新設定を加える作品ではないため、本記事では詳しい解説は省きます。
「舞台装置の魔女」とワルプルギスの夜の元ネタ
ワルプルギスの夜は「舞台装置の魔女」と呼ばれ、歯車と巨大な人形を組み合わせたような独特な姿をしています。
公式設定では、ワルプルギスの夜はこの世のすべてを戯曲へ変えてしまうまで、世界を回り続ける存在とされています。一人の役者ではなく、世界そのものを巨大な舞台へ変えてしまう「装置」だからこそ、舞台装置の魔女と呼ばれているのかもしれません。
元ネタの「ワルプルギスの夜」とは?
現実の「ワルプルギスの夜(Walpurgisnacht)」は、4月30日から5月1日にかけての夜を指し、ヨーロッパの伝承では魔女たちが集う夜として知られています。
『まどか☆マギカ』のワルプルギスの夜が「複数の魔女の集合体」であることを踏まえると、多数の魔女が集まる「ワルプルギスの夜」という元ネタそのものが、その正体を暗示していたとも考えられます。
まとめ
ワルプルギスの夜については、TVシリーズ当時から「誰も知らない誰かたちの集合体」と説明されていました。そして『ワルプルギスの廻天』では「複数の魔女の集合体」と改めて示され、マルグリート、名塚底根、ワスの存在によって、その成り立ちも見えてきました。
マルグリートは、まどかよりもはるか以前に魔法少女を救おうとした少女です。しかし、すべての少女を救うことはできませんでした。
そこで、せめて救えなかった少女たちが「誰だったのか」まで失われないよう、名前と個性を残そうとした。その結果生まれたものが、名塚底根と「魔女」という仕組みだったと考えられます。
一方、その仕組みが間に合わなかった名もなき少女たちと、彼女たちの絶望を抱え込んだマルグリートは混ざり合い、「誰も知らない誰かたちの集合体」――ワルプルギスの夜になったのでしょう。
そして円環の理による救済を経た後、名塚底根を通り、人の姿となって戻ってきた存在がワス。
つまり、
- マルグリートが少女たちを救おうとする
- 名塚底根と魔女の仕組みが生まれる
- 救済が間に合わなかった少女たちと混ざり、ワルプルギスの夜になる
- 円環の理に救われる
- 名塚底根を経由し、ワスとして現世へ戻る
- 最後に「マルグリート」という名前を得る
という一連の物語として見ることができます。
そして重要なのが、「名前」です。
他の少女たちへ名前を残そうとしたマルグリート自身は、ワルプルギスの夜となったことで名前を失いました。しかし最後にはまどかから「マルグリート」と呼ばれ、再び一人の存在として認められます。
その直後、今度はワス自身が「暁美ほむら」と彼女の名前を呼び、まどかを託しています。誰かに名前を呼ばれること。誰かの名前を呼ぶこと。
『ワルプルギスの廻天』で描かれたワルプルギスの夜の物語は、名前を失った少女が再び「誰か」になり、その救済を次の少女へ渡していく物語でもあったのではないでしょうか。


























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