『チェンソーマン』第1部で、デンジや早川アキたちが追い続けた「銃の悪魔」。
13年前に世界各地へ突如として現れ、わずかな時間で100万人を超える人々を殺害したことで、「倒すべき最大の敵」のように描かれていました。
本記事では、銃の悪魔の正体と現在の状態、13年前の上陸による死亡者、早川アキやマキマとの関係、能力、13年前に誰が倒したのか、そして第2部で判明した戦争の悪魔との関係まで解説・考察します。
この記事はチェンソーマン第1部・第2部最終話までのネタバレを含みます。
銃の悪魔の正体は?【結論】

「銃の悪魔」は、人々が「銃」という存在へ抱く恐怖から生まれた非常に強力な悪魔です。
『チェンソーマン』では、悪魔はその名前の対象が人間から恐れられているほど強くなります。銃は戦争やテロ、殺人などと強く結びついた武器であり、その恐怖を背負った銃の悪魔は、作中でもトップクラスの破壊力を持っています。
第1部では、13年前に起きた大量虐殺以降も行方不明となっており、アキたち公安のデビルハンターは「銃の悪魔を見つけ出して倒す」ことを目標としていました。
しかし、第9巻でマキマから真実が明かされます。銃の悪魔は13年前の襲撃後、すでに何者かによって倒され、意識を失った状態でソ連に発見されていました。その後、肉体は各国などに分割して保有されています。
保有者 |
銃の悪魔の肉体 |
|---|---|
ソ連 |
28% |
アメリカ |
20% |
中国 |
11% |
その他の国 |
4% |
世界中の悪魔 |
37% |
つまり第1部で長く「世界のどこかを逃げ回っている怪物」のように思われていた銃の悪魔は、実際にはそうではありませんでした。
各国に肉体を分割され、保有量そのものが国家間の軍事力・抑止力として利用されていた存在だったのです。現実世界でいう核兵器の抑止力に近い立場になっていたとも言えるでしょう。
「銃の悪魔を倒す」というデンジやアキたちの目標そのものが、物語の途中で大きく意味を変えることになります。
銃の悪魔の上陸
世界各地を短時間で襲撃
第1部開始の13年前、銃の悪魔は突如として世界各地へ出現しました。
そのきっかけには、銃を使用した大規模な事件によって、人々の「銃」に対する恐怖が急激に高まったことが関係しています。
強大な力を得た銃の悪魔は、日本・アメリカ・中国・ソ連など世界各地を凄まじい速度で移動。それぞれの地域には数秒から数分ほどしか滞在していません。それにもかかわらず、100万人を超える人々の命を奪いました。
銃の悪魔はその巨大な身体で高速移動するだけでも周囲を破壊し、さらに身体に備わった大量の銃から遠距離へ正確に弾丸を撃ち込みます。
この上陸によって世界中の人々は銃だけでなく「悪魔」という存在そのものへの恐怖も強めることになります。
銃の悪魔の上陸後、銃の規制が強化された
銃の悪魔による大量虐殺の後、各国では銃の製造や所持に対する規制が強化されました。
これは、単に銃を使った犯罪を防ぐためだけではありません。銃による事件が増え、その様子が報道されれば、人々の「銃への恐怖」が強くなります。そして銃への恐怖が強まるほど、銃の悪魔も強くなります。
そのため銃の事件自体を減らし、必要以上に報道しないことは、銃の悪魔を強化させないための対策でもありました。
しかし裏では、各国が秘密裏に銃を製造。犯罪者などが使用した銃についても、「銃の悪魔との契約で手に入れた」と偽っていたことが後に判明します。
銃の恐怖を抑えようとする一方で、その恐怖を軍事力として利用する。銃の悪魔は、人間に倒されるべき怪物でありながら、いつしか人間同士の争いに利用される兵器へ変わっていたのです。
銃の悪魔による死亡者・被害者数
13年前の国別死亡者リスト
銃の悪魔が13年前に世界各地へ上陸した際の被害は以下の通りです。
国 |
上陸時間 |
被害者数 |
|---|---|---|
日本 |
26秒 |
5万7912人 |
アメリカ |
124秒 |
54万8012人 |
中国 |
37秒 |
31万6932人 |
カナダ |
7秒 |
8481人 |
ソ連 |
210秒 |
15万5302人 |
ハワイ |
0.4秒 |
780人 |
メキシコ |
2秒 |
6088人 |
インド |
15秒 |
2万9950人 |
以上もの死者が出ており、その規模は国家の存立を揺るがすほどでした。その銃の悪魔の上陸は、わずか5分間で全世界で約120万人以上の命を奪うというとてつもない被害をもたらしました。
わずかな滞在時間だけでこれほどの犠牲者を出していることからも、銃の悪魔の異常な攻撃力が分かります。
早川アキの両親と弟・タイヨウも死亡
銃の悪魔によって人生を大きく変えられた人物の一人が、早川アキです。13年前に銃の悪魔が日本へ上陸した際、アキは両親と弟のタイヨウを失いました。
雪の中で弟と遊ぼうとしていた直前、自宅ごと家族を吹き飛ばされます。アキだけがその場から離れていたことで生き残りました。
この出来事によってアキは銃の悪魔への復讐を誓い、公安のデビルハンターになります。つまり、銃の悪魔はアキというキャラクターの人生そのものを決定づけた存在です。
再び現れた銃の悪魔の死亡者リストにはアキの名前も
第1部終盤では、アメリカが保有していた20%分の銃の悪魔が、マキマを殺害するために日本へ投入されます。
この時にも大規模な攻撃が行われ、第75~76話では犠牲者の名前が次々と表示されます。そして、その死亡者の中には、「早川アキ」の名前も記載されていました。
つまりアキは、家族を殺した銃の悪魔への復讐を追い続け、最後には自分自身も銃の悪魔によって死亡したことになります。
その後、さらに残酷な展開が待っています。
銃の悪魔と早川アキの関係
家族を殺され、銃の悪魔への復讐を誓う

上述の通り、アキにとって銃の悪魔は、単に公安から討伐を命じられた敵ではありません。
家族の仇です。アキがデビルハンターになり、寿命を削るような危険な契約を繰り返していたのも、その根底には銃の悪魔を殺したいという復讐心がありました。
物語序盤のアキは、復讐を果たすためなら自分の命を犠牲にすることさえ厭わない人物でした。しかし、デンジやパワーと暮らすうち、その価値観は少しずつ変わっていきます。
銃の悪魔よりもデンジとパワーを選んだ
マキマから「銃の悪魔はすでに倒されている」と知らされたアキは、自分が長年追い続けてきた復讐そのものを失います。さらに未来の悪魔によって、自分とパワーがデンジに殺される未来も知らされていました。
そこでアキが最後に選んだのは、復讐ではありません。デンジとパワーを守ることでした。
マキマのもとを訪れたアキは、力を貸してほしいと懇願します。
早川アキ『どんな悪魔と…どんな契約でもします…俺に…力を貸してください……。』
出典: チェンソーマン 第9巻 74話
銃の悪魔を倒すためなら自分が死んでも構わないと思っていたアキが、最後には自分以外の誰かを守るために力を求めています。
この言葉は、アキにとって復讐よりもデンジとパワーとの生活の方が大切になっていたことを示しています。アキにとって二人は、いつの間にか失った家族に代わる新しい家族になっていたのでしょう。
アキは死亡後「銃の魔人」になる

しかし、アキが選んだ未来は叶いませんでした。
上述の通り、アメリカによって投入された銃の悪魔の攻撃でアキは死亡します。
その後、激戦の果てに逃亡した銃の悪魔によって死亡したアキの死体を、銃の悪魔が乗っ取って銃の魔人になってしまいました。
デンジの手で銃の魔人を倒すことに
銃の魔人となったアキは、デンジの家を訪れます。現実では銃撃によって街を破壊し、デンジへ攻撃を続けています。
しかし、アキ自身の意識ではそれが「雪合戦」のように見えていました。
かつて家族を失った雪の日。そして今度は、新しく家族になったデンジとの雪合戦。最終的にデンジは、周囲の人々を守るため、自分の手でアキを倒します。
アキは銃の悪魔への復讐を人生の目的としていました。
しかし最後には、その銃の悪魔に身体を奪われ、自分が守ろうとしたデンジによって倒される。銃の悪魔とアキの関係は、第1部でも特に救いのない形で終わります。
銃の悪魔とマキマの関係
マキマは銃の悪魔がすでに倒されていることを知っていた
出典: www.youtube.com
第1部では長い間、「銃の悪魔を見つけて倒す」ことが公安の目的として示されていました。
しかしマキマは、銃の悪魔がすでに何者かによって倒され、各国に分割して保有されていることを知っていました。
銃の悪魔の肉片を集めて本体を探すというアキたちの行動も、その事実を知らされないまま進められていたことになります。さらに各国は、銃の悪魔を殺すどころか、その肉体を国家間の抑止力として利用していました。
アキが人生を懸けて追っていた復讐相手は、すでに「倒すべき敵」ではなく、人間によって管理・利用される兵器になっていたのです。
アメリカ大統領が銃の悪魔を使ってマキマを攻撃
マキマ=支配の悪魔の危険性を認識したアメリカ大統領は、自国が保有していた銃の悪魔を利用します。
代償として差し出したのは、アメリカ国民一人につき寿命1年分。そしてアメリカが保有する20%分の銃の悪魔をマキマ討伐へ投入しました。
つまり、第75話で登場した銃の悪魔は、13年前に世界を襲った完全な状態ではありません。それでも恐るべき速度と射撃能力を見せ、マキマを攻撃しながら多くの人々を殺害しました。
マキマは銃の悪魔を迎撃する
銃の悪魔はマキマを攻撃し、実際に彼女を死亡させるほどの攻撃を行います。
しかしマキマは内閣総理大臣との契約によって、自身への致命的な攻撃を日本国民へ転嫁することができます。そのため、銃の悪魔だけではマキマを完全に殺すことができません。
マキマは支配下に置いていた複数の人物・悪魔の能力を組み合わせ、銃の悪魔を迎撃します。そしてその後、アキの死体を乗っ取った「銃の魔人」がデンジのもとへ現れることになります。
つまり第1部では、世界中から恐れられていた銃の悪魔ですら、最終的にはマキマの計画の中へ取り込まれていったという構図になっています。
【考察】「銃=自由」と「支配」の戦い?
ここからは、原作で明言された設定ではなく考察です。
銃の悪魔とマキマの戦いには、「自由」と「支配」の対立が重ねられている可能性があります。「銃(じゅう)」と「自由(じゆう)」は、日本語では近い響きを持ちます。
さらに銃の悪魔をマキマへ差し向けたのは、自由を国家理念の一つとして掲げるアメリカです。対するマキマは「支配の悪魔」。
つまり、アメリカ/銃/自由と、マキマ/支配が対立する構図になっています。
もちろん「銃=自由」という関係が作中で明言されたわけではありません。しかし、自由を掲げる国が「銃」を使って「支配」を倒そうとし、最終的には敗北するという構図には、藤本タツキ作品らしい皮肉を見ることもできます。
【考察】13年前に銃の悪魔を倒したのは誰?
銃の悪魔に残された大きな謎があります。
13年前、銃の悪魔を最初に倒したのは誰だったのでしょうか。マキマによれば、ソ連軍が銃の悪魔を発見した時には、すでに何者かによって倒され、意識を失った状態でした。
しかし、その人物・悪魔の正体は最後まで明言されていません。そのため、ここからは考察になります。
チェンソーマン(ポチタ)説

候補の一つが、ポチタ=本来のチェンソーマンです。
ポチタは四人の騎士や武器人間の元となった悪魔たちを相手に戦えるほどの圧倒的な戦闘力を持っています。そのため、完全な状態の銃の悪魔を倒すことができても不思議ではありません。
ただし、銃の悪魔という概念が残っている→ チェンソーマンではないと断定することはできません。
チェンソーマンは悪魔を「食べた場合」に概念を消します。単純に戦闘で倒すだけなら、存在そのものを消す必要はありません。したがって、ポチタ説を否定する決定的な材料もありません。
マキマ(支配の悪魔)説

もう一人の候補がマキマです。
第1部で20%の銃の悪魔と戦った際にも、マキマは最終的に銃の悪魔を退けています。さらに銃の悪魔がすでに倒されていることや、各国が肉体を保有している状況について詳しく把握していました。
そのため、13年前にもマキマが関係していたのではないかと考えることはできます。
ただし、「13年前に銃の悪魔を倒したのはマキマ」と作中で明言されたわけではありません。ポチタ、マキマ、あるいはまだ明かされていない別の存在も含め、真相は不明となっています。
銃の悪魔の強さ・能力
「銃」への恐怖によって強くなる

『チェンソーマン』における悪魔の強さは、その名前がどれだけ恐れられているかによって変化します。
銃は人を簡単に殺すことができる武器であり、戦争、犯罪、テロなどとも強く結びついています。
さらに銃の悪魔自身が大量虐殺を行ったことで、「銃への恐怖」がさらに増加。自分自身の虐殺によって、自分をさらに強くする恐怖を生み出していたとも言えます。
超高速で世界を移動する
銃の悪魔は、世界各国を非常に短い時間で移動しています。
巨大な身体そのものが凄まじい速度で移動するため、通過するだけでも周囲の建物や人間へ甚大な被害を与えます。
13年前の上陸で世界各地に膨大な死者が出たのも、この異常な移動能力と射撃能力によるものです。
数km先の相手を条件指定して撃つ
銃の悪魔は、単に大量の弾丸をばら撒くだけではありません。
対象の年齢・性別・誕生月などによって攻撃対象を選別し、遠距離から頭部や心臓へ正確に弾丸を撃ち込むことができます。
アメリカ大統領が「銃の悪魔」を秋田県にかほ市沖合に召喚した時には周囲およそ1キロの誕生月(1月、2月、3月、5月、6月、8月、9月、11月、12月)の生物の心臓に銃弾を放つという、範囲指定型の精密な攻撃能力を見せました。
そのため巨大な怪物でありながら、攻撃そのものは極めて精密です。さらにその射撃は無尽蔵であり、弾切れが起こるような描写はありませんでした。
銃の悪魔の肉片は他の悪魔を強化する

銃の悪魔の身体から落ちた肉片にも特殊な力があります。
他の悪魔が食べると、その悪魔を強化します。第1部では永遠の悪魔などが銃の悪魔の肉片を取り込み、通常より強力になっていました。
また、銃の悪魔の肉片同士には互いに引き合う性質があります。公安はこの性質を利用し、肉片を集めることで銃の悪魔本体へ近づこうとしていました。
第2部での銃の悪魔と戦争の悪魔・ヨル
銃の悪魔は「戦争の悪魔の子供」だった

第2部第176話では、銃の悪魔についてさらに重要な事実が判明します。
戦争の悪魔・ヨルは、銃の悪魔と戦車の悪魔を自分の「子供」として扱っています。
ヨルはチェンソーマンへ対抗するため、それまで使うことをためらっていた二つの存在を呼び寄せます。
銃も戦車も、戦争と強く結びついた兵器です。そのため「戦争」が生み出したものという意味でも、ヨルの「子供」として描かれていると考えられます。
「銃右腕鎧」に武器化される
ヨルは銃の悪魔を、「銃右腕鎧(ガンライトガントレット)」へ変化させ、自身の右腕として装備します。
同時に戦車の悪魔も、「戦車左腕鎧(タンクレフトガントレット)」へ変化しました。
銃と戦車という、自分にとって「子供」にあたる存在を犠牲にしたことで、ヨルは極めて強力な武器を手に入れます。武器化した銃の悪魔の攻撃は、黒いチェンソーマンに大きなダメージを与えるほどの威力を発揮しました。
第1部の「最大の敵」が第2部では武器になる
ここは銃の悪魔という存在の扱いを考えるうえでも印象的です。
第1部では、世界中の人間から恐れられ、アキが人生を懸けて追い続けた最大の敵のように描かれていました。
しかし、物語を進めれば、国家に分割され、マキマに敗れ、アキの死体を乗っ取り、最後には戦争の悪魔によって武器へ変えられる。銃の悪魔自身も、常により大きな存在によって利用され続けています。
人間を一方的に殺す「恐怖の象徴」として登場した存在が、最終的には国家や支配、戦争によって使われる一つの兵器になっていく。そこには、銃というもの自体が「使う者によって意味を与えられる武器」であることと重なる皮肉も感じられます。
まとめ
「銃の悪魔」は、人々の「銃」への恐怖から生まれた強大な悪魔です。
13年前に世界各地へ突如として現れ、日本やアメリカ、中国、ソ連などで100万人を超える人々を殺害しました。しかし、その後は何者かによってすでに倒されており、物語開始時点では肉体を世界各国や悪魔たちが分割して保有しています。
つまり、第1部で「倒すべき最大の敵」のように思われていた銃の悪魔の正体は、自由に世界を襲う怪物ではなく、人間たちによって国家間の軍事的な抑止力として利用されていた存在でもありました。
そして、銃の悪魔によって最も人生を狂わされた人物が早川アキです。
家族を殺され、復讐のためにデビルハンターとなったアキ。しかし最後には、復讐よりもデンジとパワーを守ることを選びました。それにもかかわらず、自分自身も銃の悪魔によって死亡し、その死体を銃の悪魔に乗っ取られます。
そして最後は、自分が守ろうとしたデンジの手で倒されることになりました。
一方、世界中から恐れられた銃の悪魔も、物語を通して見ると決して自由な存在ではありません。
各国に身体を分けられ、アメリカからマキマを倒すために使われ、マキマに敗れ、第2部では戦争の悪魔・ヨルによって武器に変えられました。
人間を恐怖させた「銃」も、結局は誰かが目的を果たすために使う武器でしかない。そう考えると、銃の悪魔は単に強大な悪魔というだけではなく、銃という存在そのものが持つ「恐怖」と「利用される兵器」という二面性を体現した悪魔だったとも考えられます。





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