この記事では『ゼルダの伝説 風のタクト(風タク)』についてまとめて解説・考察しています。
目次
概要
『ゼルダの伝説 風のタクト』は、2002年にゲームキューブで発売され、第3作目の3D作品となっております。
「触れるアニメ」をコンセプトに開発され、トゥーンレンダリングという技術を使い、3DCGを使ったアニメ映画のようなデザインで、キャラクターたちもデフォルメされており、全体的に可愛らしい雰囲気があります。
広大な海を舞台に、少年リンクが妹を救うために冒険を始め、やがてハイラル王国とガノンドロフの因縁の戦いに巻き込まれていく物語です。
独特な世界観と音楽、そして深みのあるストーリーが特徴的なこの作品は、ゼルダシリーズの中でも特に人気の高い一作となっています。
ゲーム性
広大な海を舞台にしたオープンワールド的なゲーム性が特徴です。プレイヤーは「風のタクト」という指揮棒を使って風向きを操り、「赤獅子の王」という話せる船を使って海を自由に航海します。
この航海システムは、広大な世界を探索する楽しさを提供し、プレイヤーに冒険の高揚感をもたらしています。
ゲームの進行は、ダンジョン探索や謎解き、アイテムを使った戦闘など、「時のオカリナ」などの従来のゼルダシリーズの要素を継承しつつ、新しい要素も多く取り入れられています。
また、ゲームキューブのオリジナル版では、ゲームボーイアドバンスとの連動機能により協力プレイも可能となり、ゲーム体験をさらに豊かにしています。
あらすじ・ストーリー
ストーリーを全て大雑把に解説するので、多大なるネタバレを含みます。
プロローグ
プロロ島で平和な日々を送っていた「リンク」とその妹「アリル」、おばあちゃん、そしてプロロ島の住民たち。
その平和な日々に怪鳥が突如現れ、その怪鳥は少女を連れ去らっていました。少女は海賊の頭の「テトラ」であり、船員たちが怪鳥に攻撃を加えており、テトラを無事救出することに成功します。
しかし、今度は妹のアリルが怪鳥にさらわれてしまいます。アリルを救出するためにテトラの海賊船に乗り、さらわれた先の魔獣島へと潜入します。
新たな出会い
魔獣島に潜入したリンクでしたが、アリルが捕まっている牢を見つけたものの、アリルをさらっていった怪鳥に見つかってしまい、黒幕と思しき人物に命令されて遠くへと投げ飛ばされてしまいます。
気絶して海に浮かんでいたリンクを助けたのは、話すことのできる自我を持つ船「赤獅子の王」でした。
3つの神珠を集める旅
「赤獅子の王」により、魔王ガノンドロフの封印が解かれて復活し、世界は再び邪悪な力に脅かされているのだそうです。
リンクが苦難の末に手に入れた力、それこそがガノンドロフを打ち倒すカギなのだと教えてもらえます。
タウラ島で赤獅子の王の「帆」を入手し、3つの精霊がいる島に向かい、その精霊から神々の力が宿る「神珠」を授けてもらう旅に出ることとなります。
「ディンの神珠」は「竜の島」にいる空の精霊「ヴァルー」という竜に、「フロルの神珠」は「森の島」にいる大地の精霊「デクの樹」に、「ネールの神珠」は「魚の島」にいた水の精霊「ジャブー」に授けていただきます。
神の塔
「ディンの神珠」、「フロルの神珠」、「ネールの神珠」を集め、その3つの神珠を「三角島」に収めると、「神の塔」が出現します。
神の塔は、人の持つ勇気を試すために太古の神が用意した試練の場であり、この試練を突破することで神に勇者と認められ、巨悪を滅ぼす力を持つことが許されます。
リンクは知恵と勇気を駆使し、神の塔の試練を突破します。海上に光の柱が現れてその中に入ると、海の中に吸い込まれていってしまいます。
マスターソード
海の中には過去に沈んでしまった謎の国がありました。
なぜか時が止まっており、城の地下には巨悪を滅ぼす力、退魔の剣「マスターソード」が安置されていました。マスターソードは封印の要でもあり、抜くと封印も解かれて時が動き始めます。
ガノンドロフの力
マスターソードを手に入れたリンクは、魔獣島にアリル救出へと向かいます。
マスターソードで魔物たちを倒し、再びアリルが捕まっている牢に到着します。アリルや他にも捕まっていた少女たちをテトラに任せ、因縁の敵「怪鳥ジークロック」との戦いになります。
ジークロックを打ち倒したリンクは、そのままガノンドロフの元へと向かいます。しかし、マスターソードを持ってしてもガノンドロフに敵いませんでした。
助けに来てくれたテトラ共々、ピンチに陥ります。しかしその時、リト族の「オドリー」と「コモリ」がガノンドロフの隙をついて二人を救出、そこに追い討ちとしてヴァルーの炎で焼き尽くし、リンクたちはその場から逃げることに成功します。
テトラと赤獅子の王の正体
海の中の国に戻ってきた、リンクとテトラ、そして赤獅子の王。不思議な声に導かれながら城の地下へと向かいます。
地下には謎の人物がおり、その人物から様々な真実を教えてもらいます。
今いる場所は、勇者伝説に残っている王国。神の力が眠る王国「ハイラル」だと言われ、そしてその謎の人物は、赤獅子の王の正体、ハイラル王「ダフネス・ノハンセン・ハイラル」であり、テトラはハイラル王家の血を継いだ「ゼルダ姫」だったのです。
2つの使命
ハイラル王はリンクに2つの使命を言い渡します。
その使命とは、賢者の力を借りてマスターソードに退魔の力を宿すこと、8つに分かれて散った「勇気のトライフォース」のかけらを海底から引き上げることです。
退魔の力
賢者はハイラルの北にある「風の神殿」と南にある「大地の神殿」におり、神への祈りを続けているはずでしたが、すでにガノンによって命を落としていました。
ですが、大地の賢者の血を引く巫女であるリト族「メドリ」、風の賢者の血を引く森の精霊であるコログ族「マコレ」をそれぞれの神殿に連れて行って覚醒させ、マスターソードに退魔の力を再び宿すことに成功します。
勇気のトライフォース
ハイラル中に散った「勇気のトライフォース」のかけらを集める旅です。
様々な人々と関わり合いながら情報を集め、トライフォースが沈んである場所が示されている海図をチンクルに解読してもらい、8つとも集めて「勇気のトライフォース」を完成させます。
「勇気のトライフォース」を神に見せると、ハイラルへの道が再び開かれ、勇気のトライフォースがリンクを真の勇者と認めてリンクにトライフォースが宿ります。
こうして、風を操り、海を駆け、冒険の末に神の力を宿したことにより、リンクは「風の勇者」となるのです。
ゼルダを助けに
ハイラル城の地下へと向かってゼルダを迎えに行くものの、すでにガノンドロフの手に落ちてしまっていました。
マスターソードの力によりハイラル城の封印を解き、ガノンドロフの後を追ってガノン城へ着きます。
そして、リンクは今までの力を駆使し、ガノン城の最奥へとたどり着きます。
ガノンドロフはゼルダを眠らせ、時の勇者の生まれ変わりであるリンクを、自身の前にでるにふさわしい勇者となって現れるのを待っていました。
リンクの力を試すために、クグツガノンというガノンドロフの傀儡を仕掛けますが、それをリンクが倒してガノン城の頂上へ向かいます。
トライフォースの復活
ガノン城の頂上へとたどり着いたリンク。リンク、ゼルダ、ガノンドロフに宿る、勇気と知恵と力のトライフォースが集い、伝説の神々の力が蘇ります。
トライフォースはトライフォースに触れた者のいかなる望みも叶えます。そして、ガノンドロフは願いを叶えようとします。
この地を再び日のもとにさらし!
ハイラルを我が手に!
しかし、一瞬の隙を付いてハイラル王がトライフォースに触れ、願いを宣言します。
トライフォースの神々よ。我は望む!
未来を!この子らに、希望ある未来をあたえよ!
過去の地ハイラルを消し去り、この子らの未来に光明を!
ガノンドロフは目的すらも達成できずに絶望します。ですが、リンクたちの希望がトライフォースに値するかを試すために最後の戦いになります。
最終決戦
二刀流の魔王ガノンドロフに対し、風の勇者リンクが最後の戦いへと挑みます。
退魔の力を宿すマスターソードを操るリンクと魔を討ち破る光の矢を放つゼルダの共闘により、死闘の末、風の勇者に貫かれたガノンドロフは石化して、今度こそ眠りにつきました。
消えるハイラル
ハイラル王の願いにより、完全に海の底に沈んでいくハイラル。
私は過去を悔い、過去と向き合って生きてきた。
もう一度やり直せれば…。ありし日の王国のことを考えない日はなかった。
私は、この地ハイラルに縛られていた。
その意味では、ガノンドロフと私は同じなのだ。
だが…お前たちには、前をむいて生きて欲しいのだ。
なにも無いかもしれない…。それでも、その先を見つめて歩いて欲しいのだ。
さらばだ…。
私たち大人は、お前たちにこんな世界しか残すことができなかった。
ゆるしておくれ。
ハイラル王はハイラルではない新たな地をリンクやゼルダたちに託し、ハイラルの地とともに海の底に沈んでいきました。
新たな大地を探す旅
魔王と古き大地も消えた海。プロロ島のみんなに見送られ、テトラと海賊団、そしてリンクは船に帆を張りました。
雄大な大海原へ旅立ち、新たな大地を目指すのです――――。
行き先は…風が教えてくれるよ!
世界観・設定など
時系列について
上の画像の通り、時のオカリナでのラスト、魔王と時の勇者の結末によって3つの世界が分岐します。
世界 |
分岐した原因 |
敗北ルート |
時の勇者が魔王に敗北してしまった世界 |
勝利ルートの子供時代 |
時の勇者が魔王に勝利し、時の勇者が7年前に戻った後 姫に魔王の計画を伝え、魔王の計画が失敗した世界 |
勝利ルートの大人時代 |
時の勇者が魔王に勝利し、時の勇者が7年前に戻ってしまい、 7年後の世界に魔王が復活しても勇者が現れずに、 神によってハイラルは魔王もろとも海に沈んでしまった世界 |
分岐した原因は以上の表の通りです。
「風のタクト」は、「時のオカリナ」で魔王を無事倒すものの、大人時代に再び復活した魔王に蹂躙され、神によってハイラルは魔王もろとも海に沈んだ後の世界です。
リンクについて
「風のタクト」のリンクは、「時のオカリナ」のリンクが「時の勇者」として語り継がれている新たな時代の勇者です。
プロロ島に住む少年で、12歳の誕生日に島の風習で古の勇者を模した、緑衣を着せられます。「風のタクト」を使って海を渡り、世界を救ったので「風の勇者」と呼ばれています。
ガノンドロフによると「時の勇者」の生まれ変わりだと言われていますが、しっかりとした関係は明言されておりません。
テトラについて
ハイラル王国の王女ですが、自身が「ゼルダ姫」と知らずに暮らしていたため、海上で「テトラ」と名乗り海賊となっています。
自身がゼルダだとハイラル王に知らされてからは、変わってしまった状況に戸惑いを隠せずにいましたが、リンクとガノンドロフの最終決戦時にはテトラのときのような性格を取り戻してリンクとの共闘によってガノンドロフを打倒しています。
ゼルダだと判明した時
テトラが母親が受け継いで持っていた首飾りは「知恵のトライフォース」と呼ばれる、王家に伝わる聖なる宝であり、これこそがガノンが狙っていた聖なる神の力です。
神がテトラの祖先に知恵のトライフォースを託したのも、テトラがハイラル王家の血を継いだ「ゼルダ姫」だったからです。
ゼルダは神の力を宿しているがゆえに、ガノンに狙われるだろうと考え、まだガノンにも気付かれていないハイラル城の地下に残って待つこととなります。
ガノンドロフ
時の勇者によって封印されたガノンドロフが復活し、ガノンドロフもろとも海に沈んだハイラル。
しかし、時間の経過による摩耗なのか理由は不明ですが、ガノンドロフは再び復活し、ハイラルを我が物にするために暗躍します。
「風のタクト」のガノンドロフは長い時を経過しているが故に壮年期ぐらいの年齢であり、精神も少し摩耗しているように見受けられます。「時のオカリナ」のガノンドロフのような野望を果たすために手段を選ばない非情な性格ではなく、少々落ち着いた性格になっています。
ガノンドロフの胸中
そう、急くな…。この娘のユメが見える…。海…海…見渡す限りの海。
魚も撮れず、泳ぐこともままならぬ海。
ハイラル王は、何と言った?神が、ハイラルを封印したと?再びハイラルを興す民を残したと?
笑止なり…。漂う木の葉のような、数えるばかりの島で何ができる?
わからぬのか?お前たちは…。
神に滅ぼされたのだ!!
ガノンドロフはすでに神にも、この現在の世界にも絶望していたのです。
ワシの国は、砂漠の中にあった。
日のあるうちは灼熱の風。月がのぼれば荒涼の風…。
風が死を運んできた…。
ハイラルの大地に吹く風は、死とは別のものを運んでくる。
ワシは、この風がほしかったのかもしれぬ。
さらにこのように、ガノンドロフはハイラルを我が物にするという野望を抱くようになった生い立ちを語るなど、やはり己の運命に疲れ果てているのかもしれません。
ガノンドロフの最期
リンク・ゼルダとガノンドロフの決戦の末、額にマスターソードで貫かれて石となり、ハイラルと共に海の底へと沈んでいきました。
石となりましたが、ハイラルと共に眠れることはガノンドロフとって救済とも皮肉とも思える最期です。
リト族
鳥に似たクチバシや足、両腕を翼に変化させて空を飛ぶことを得意としている種族です。種のルーツは「時のオカリナ」の「ゾーラ族」であり、ハイラルが海の底に沈み、住む場所がなくなったために進化しました。
「風のタクト」では、火山島である「竜の島」に集落を築いており、島の頂上にいる空の精霊「ヴァルー」を守り神としています。
飛行能力は生まれつき持っているわけではなく、成人になったリト族が成人の儀として「ヴァルーのウロコ」を得ることで翼を授かります。
コログ族
小さな木の幹に仮面のような木の葉を付けている、妖精のような種族です。種のルーツは「時のオカリナ」の「コキリ族」であり、リト族と同じく海だらけの世界に適応した結果、このような姿に進化しました。
森の樹と呼ばれる特別な木のタネを島々に届ける儀式を年に1回行っており、作中でもコログ族が島々に旅立っていくところを見ることができます。
2人の賢者
マスターソードの退魔の力を取り戻すために賢者の力を借りることになりますが、「大地の賢者」と「風の賢者」の2人の力が必要です。理由は不明ですが、「時オカ」では7人の賢者だったものの「風タク」では2人に減っています。
そして、時の勇者により滅ぼされたガノンドロフが蘇った時、ガノンドロフはマスターソードの力を消すために、前任の賢者の命を奪います。
前任の賢者について、「大地の賢者」はゾーラ族の「ラルト」であり、現代ではリト族へと進化している種族です。
「風の賢者」はコキリ族の「フォド」であり、現代ではコログ族へと進化している種族です。
2人の賢者の血を継いでいるのが、リト族の巫女「メドリ」とコログ族の「マコレ」であり、この2人の新たな賢者の力を借りることとなるのです。
ハイラル王国
かつて、このハイラルは神の力を得ようとしたガノンによって、闇の世界へと変えられようとしていました。
勇者が現れず、為すすべがないハイラル王含めた人々は神に祈るしかなく、それを聞いた神は、ガノンもろともハイラルを封印し、海底に沈めたのです。
そして、神は封印をする前にあらかじめ新たな国を造るものを選んで、高い山々に逃げるように告げていました。その人々が現代に生きる人々、リンクたちの祖先だったのです。
ハイリア文字
「風のタクト」では、各精霊がハイリア文字を使って話すタイミングがあります。さらに、ハイラル中の壁や紙に書いてあるのもハイリア文字となっています。
ここまでハイリア文字が出てくるのはシリーズでも珍しく、ゲームキューブ版の取扱説明書にハイリア文字の手引表が載っています。
以下は各精霊が話す内容を載せています。ちなみに、2周目をプレイしていくと、精霊が話す内容を日本語に翻訳された状態で表示されます。
ヴァルー
勇者よ、感謝する。
勇者よ、風の神の風を操れ。
安心するのはまだ早い。ガノンはあれしきの事で倒せるものではないぞ。
そうか…では、頼んだぞ!
デクの樹
おまえのその格好、もしや伝説の時の勇者か?
国王は、ついに時の勇者を見つけたのか?
なんだ、ハイリア語がわからないようだな?
では、時の勇者では無いようじゃな
ジャブー
久しぶりだな、ハイラル王よ。
ついに、恐れていた事が動き始めた様だな。
お前が私に会いに来たという事は、時の勇者を見つける事が出来たという事だな。
では、お前は何をしに私に会いに来たのだ。
可能性?
その可能性とやらに、ハイラルの運命を任せようと言うのだな。
わかった。その者の勇気が真のものかどうかは、神が判断するであろう。
神への道標を受け取るが良い。
この地にかけられたガノンの呪いは、その宝玉が解いてくれるだろう。
時に、ハイラル王。お前はゼルダの血を引くものの所在を掴んでいるのか?
ゼルダがガノンの手に落ちることは断じて防がねばならない。
頼んだぞ!
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