本記事では、『呪術廻戦≡モジュロ』第3話『森を泳ぐ』のあらすじ、主要登場人物、そして作品世界に深く関わる謎や考察について詳しく解説します。
本記事では、呪術廻戦本編の単行本最新巻と『呪術廻戦≡モジュロ』第3話のネタバレを含んでいるのでご注意ください。
目次
第3話の物語あらすじ
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岐阜での任務
本話の舞台は、海なし県である岐阜の田舎です。これまで東京付近でしか確認されていなかった呪霊が、宇宙人の襲来を契機に岐阜にも出現したという設定のもと、主人公たちは「森を泳ぐサメ」の退治任務へと向かいます。
東京23区が呪霊で溢れかえっている現状は、宿儺討伐後に明かされた情報であり、かつて人口に比例して呪いが増えるという認識から、壊滅した東京が人外魔境と化していることは、呪霊の存在が公にされた影響の大きさを物語っています。
森を泳ぐサメ
岐阜での聞き込みは憂花、森の中での現地調査は真剣とマル、と二手に分かれて調査します。
真剣とマルはお互いの腹の中をすべてさらけ出せないために、言い合いの喧嘩になってしまっていたところ、突然サメが登場。マルがサメに飛びかかり、捕まえようとしたらサメの正体は、46歳の元呪術師「長田」でした。
サメの目的
降霊呪術師であるサメの長田は「人喰い虎」の「虎之助」を追っているとのこと。
虎之助は幼い頃から長田とお互いの顔を見れば気持わかるくらい頭が良い虎でした。しかし、メガソーラーのせいで川が枯れて生態系が崩れた結果、虎之助は山を降りてきたのだそうです。
長田は人を襲った虎之助を助けたいと思っていますが、真剣は駆除すべきだと主張。そこに虎之助が現れます。
虎之助の最期
虎之助は長田に一撃を与えますが、その後真剣が虎之助の鉄山靠を食らわせます。長田は虎之助との過去を思い出すも、もう過去の虎之助はもういないと覚悟を決めて真剣に駆除してもらうことを頼みます。
虎之助の駆除後、虎之助の子供が茂みから現れますが、長田に託し、第3話が幕を閉じます。
主要登場人物たちの関係性の変化
マルの人の良さ
第3話では、主人公たちの関係性にも大きな進展が見られました。
新幹線での会話では、マルが任務の情報を隠そうとするものの、真剣による「宇宙人」というカマかけに割とあっさり乗ってしまうなど、マルの人の好さが改めて示されています。
しかし、子供を助けるために術をすぐ使わなかったマルに対し、真剣の不信感は依然として残っていました。
マルの想い
地球人と仲良くしたいマルは本来は隠さなければいけない自身の役割を真剣に話します。
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マルは地球人とシムリア星人が共生できるかどうかの判断するための情報収集担当であること、マルの術式は双子の弟「クロス」と共有しており、緊急時以外は使用禁止なこと、マルが術式を使うほど重大なことが起きたとクロスに伝わると心象が悪くなると思い、術式を使うのを躊躇っていたことを話しました。
虎と宇宙人は同じ立場、しかし、地球人とシムリア星人は言葉でコミュニケーションが取れるからこそ、共生できるのではないかとマルは想っていました。
つまり、今回はマルの行動の主軸が「共生」を目指すところにあることが明確に描かれるとともに、マルとクロスが双子の兄弟であり、マルが兄であるという新情報が明かされます。これにより、真剣は前回ラストでクロスが見せた冷たい態度の理由を理解し、マルに対する誤解が解消されました。
憂花の役割
また、憂花は今回別行動をとっていましたが、これは共生派(マル、長田)と処分派(真剣)の対立構造を複雑化させないための作者の意図的な判断と推察されます。真剣とマルの関係性が好転したことで、二人の協力関係が本格的にスタートしたと言えるでしょう。
第3話の核心に迫る考察
「森を泳ぐサメ」の正体とその背景、そして登場人物たちの術式や行動原理には、作品のテーマを深く掘り下げる要素が多数含まれています。
海のない岐阜で「森を泳ぐサメ」という奇妙な事件は、その真相が明らかになるにつれて、より複雑な様相を呈します。
呪術師・長田の術式
「森を泳ぐサメ」の正体は、46歳の元呪術師である長田でした。彼は動物の着ぐるみを着用することでその動物の力を降ろし、性能を得るという降霊術を使用します。この術式は一見便利に思えますが、その見た目から「社会性を犠牲にしている」という意味で強力な「縛り」を伴うのではないかと思われます。
長田は、ある虎を救うという信念のもと、サメの着ぐるみ姿で行動していました。彼の姿は、変態が仁王立ちしてメインキャラクターを座らせるという、どこかユーモラスな構図として描かれ、特定の過去作品を想起させる演出でもありました。
虎之助を巡る共生と殺処分の議論
長田が救おうとしていたのは、人喰い虎「虎之助」でした。過去につがいで連れてこられた虎が山中で子孫を残していたという、現実にも通じる問題が描かれます。
虎之助の駆除を巡る議論は、近年増加しているクマの出没問題にも通じるものがあり、超常基金がきっかけではあるものの、温暖化やメガソーラーといった現実の環境問題にも触れることで、漫画を読みながら社会問題を考察できる深みを提供しています。
マルは、この虎との共生問題を地球人とシムリア人との共生に重ねて考えます。しかし、既に人を喰ってしまった虎之助は、長田が過去に遭遇した幼い頃の虎とは異なり、殺処分せざるを得ない状況でした。
ここで真剣が発した「その虎が今度また人を殺したとしてアンタに何ができる」という台詞は、伏黒が助けた虎杖が結果的に人を殺したという状況を想起させ、虎之助が虎杖のメタファーである可能性を示唆しています。
マル・クロス兄弟の術式と今後の関係性
本話で、マルとクロスが双子の兄弟であり、術式を共有しているという新情報が明かされました。
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この術式共有は、大きく使った(第三の目の開放など)場合に限定されるため、真剣の捜索時にはバレなかった可能性が考えられます。術式が具体的にどのように伝わるのか、また相手側が何らかの代償を払う必要があるのかなど、今後の展開で明らかになるであろう点が注目されます。
前回ラストで生じた真剣とクロスの間の誤解が、今回の情報開示によって短期間で解消されたことは、物語のストレス要素を長く引っ張らないという作者の意図が感じられます。おおらかな兄マルと、気が立ちやすい弟クロスという対比は、今後二人の間で対立が生じる可能性も示唆しています。
虎之助の子供が示唆する未来への伏線
最終的に、親である虎之助は殺処分されましたが、その子供である虎之助の子供が見つかり、真剣が見逃すという展開になりました。
『”ソイツがどうなるかはまだ誰にも分からねえ 俺達もな”』という台詞は、共生の困難さ、そして未来への希望を同時に感じさせる読後感を残しました。この一連の出来事は、縦軸の物語を大きく進めるものではないものの、キャラクターの心情とテーマの深掘りという点で、読者に十分な満足感を与えています。
第3話に込められたメッセージ
『呪術廻戦≡モジュロ』第3話は、過去作品へのオマージュや社会問題への言及を通じて、単なるアクション漫画に留まらない深いメッセージを読者に伝えています。
過去作品へのオマージュと演出の妙
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第3話には、様々な作品へのオマージュが散りばめられていました。サメが登場する見開きは、本編の少年院編における緊張感あふれる場面のセルフパロディとして描かれ、そのギャップが笑いをもたらしました。
また、長田の描写は『銀魂』を想起させるユーモラスなものであり、虎之助の子供を見逃すシーンは『HUNTER×HUNTER』のオマージュとして、異なる文脈で再構築されています。これらのオマージュは、内輪ネタに終始せず、物語に新たな読み味を加える効果的な演出として機能しています。
社会問題への言及と作品のテーマ性
本話で描かれた虎之助を巡る問題は、現実社会におけるクマの出没問題や温暖化、メガソーラーといった環境問題と深く結びついています。ファンタジーの要素を交えつつも、時世を捉えた社会描写は、読者に漫画を楽しみながら社会について考えるきっかけを与えています。
『”孤独は必ずしも悪いことばかりじゃない”』や『”きっとオマエを強くする”』という長田の回想での言葉は、宿儺の生き様を想起させ、孤独が攻撃性へと繋がる可能性も示唆しています。長田が虎之助に「愛」を教えられなかったという描写は、共生における愛情の重要性を浮き彫りにしています。
まとめ
岩崎優次先生は、顔の良い男女だけでなく、長田のようなキャラクターの喜怒哀楽の表情も豊かに描き出し、読者の感情移入を促しています。マルの共生への強い意志、真剣の不信感から理解への変化、そして長田の深い心情描写は、物語に奥行きを与えています。
作者コメントでは「毎週何を描くことになるのかドキドキ…え?サメとトラですか?最高です!!」とあり、岩崎先生自身も予測不能な展開を楽しんでいる様子が伺えます。
『呪術廻戦≡モジュロ』第3話は、ユーモラスな描写と深いテーマ性、そしてキャラクターの成長がバランス良く描かれた一話となりました。今後の展開にさらなる期待をせざるを得ません。
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