『Pokémon LEGENDS Z-A』(以下、ZA)は、カロス地方のミアレシティを舞台に、人とポケモンの共存を目指す壮大な物語を描く作品です。本記事では、過去作との関係性や舞台となる時代、そしてシリーズ全体の時系列において極めて重要な情報をまとめて、時系列を考察していきます。
目次
ポケモン世界における並行世界の概念
ポケモン世界には、複数の並行世界が存在することが、ゲーム内での描写から確定しています。特に、メガシンカの存在の有無が、主要な世界線を分ける大きな要因となっています。
メガシンカの有無が分ける世界線
『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』(以下、ORAS)の「エピソードデルタ」におけるヒガナの発言から、メガシンカのある世界線とない世界線が存在することが示唆されています。
過去の作品は、メガシンカの有無によって大きく二つのカテゴリに分類されていました。
メガシンカ登場作品 |
メガシンカ未登場作品 |
|---|---|
XY |
赤緑青ピカチュウ |
ORAS |
FRLG |
SM |
金銀クリスタル |
USUM |
HGSS |
ピカブイ |
RSE |
ZA |
DPt |
– |
BW |
– |
BW2 |
– |
剣盾 |
– |
LA |
– |
SV |
ZAは「ホウエン起源のメガシンカ」世界線
『ZA』で明かされた情報により、メガシンカの起源に関する考察にあたって、ZAの世界はどっちなのかは確定しました。
元々、メガシンカはカロス地方でしか確認されていない現象であり、ルカリオを連れたトレーナーが世界で初めてメガシンカを成功させたということが、『XY』の公式サイトに書かれていたり、『XY』本編のプラターヌ博士が語られておりました。
しかし、『ORAS』により、ホウエン地方がメガシンカ発祥の地であり、レックウザのメガシンカが起源と語られ、おそらく設定の変更が行われています。
そして『ZA』のミアレ美術館の説明とNPCの会話から以下のことが判明しました。
カロス地方において、初のメガシンカ現象を起こしたのが、ルカリオだったことを記念し、マスタータワーに建立されたメガルカリオ像のレプリカ
メガシンカの始まりって遠いホウエン地方だっけ?
ミツコ「なんでもAZという人物は、遠く離れたホウエンという場所で、メガシンカの起源というべき現象を知り独自に調査していたそうで…」
これらの情報から、『ZA』の世界線は『ORAS』で語られた「ホウエン地方がメガシンカ発祥の地」という設定を基盤としつつ、『XY』で語られた「ルカリオがカロス地方で初のメガシンカを成功させた」という出来事を内包する、設定が整理されたような形になっていますが、メガシンカが存在する世界なのは違いありません。
つまり、「メガシンカの起源はホウエン地方」と「カロス地方での初めてのメガシンカがメガルカリオ」ということが確定している世界となります。
カロス地方にまつわる歴史
『XY』と『ZA』では、3000年前の遠い昔から「現在」に至るカロス地方の歴史が語られています。特に、AZの存在がその中心にあります。
3000年前
判明しているカロス地方の歴史は、3000年前のAZの物語から始まります。
カロス戦争と最終兵器の誕生
3000年前、カロス地方を治めていたAZは、時代を超えた技術でカロスを豊かにしました。
しかし、その豊かさが故にカロスは狙われ、他国との間に戦争が勃発します。AZの愛するポケモン、フラエッテも戦場に駆り出され命を落としました。
AZはフラエッテを蘇らせるために「命を与えるキカイ」を造り、フラエッテを蘇らせます。しかし、怒りが収まらなかったAZはキカイを「最終兵器」へと改造し、戦争を終わらせるために破壊の神となりました。
兵器から放たれた光は地表を焼き払い、戦争は終結。AZ自身もその光を浴びたことで3000年もの寿命を得ます。しかし、フラエッテは与えられた命が他のポケモンから奪われたものだと知り、AZのもとを去り、AZは3000年間を彷徨い続けることになります。
この最終兵器の砲身の形状は『X』と『Y』で異なり、『ZA』の最終兵器もどちらとも異なる形状をしており、ゼルネアスとイベルタル両方のエネルギーが取り込まれた様子が描かれています。
ガラル地方のブラックナイトとの関連
AZが亡くなった後、ホテルの自室に置かれた手紙には「ガラルを襲った黒い空」といった記述があり、3000年前のガラル地方で発生した「ブラックナイト」を指すと考えられます。
ブラックナイトは、巨大なポケモンが暴れまわりガラル地方を滅ぼしかけたとされる厄災であり、AZがこの出来事に立ち会ったか、カロスからも見えるほどの規模であった可能性が示唆されています。
ヒャッコクシティの日時計の謎
カロス地方北東のヒャッコクシティにそびえる日時計も、3000年前から存在すると言われています。
現代の技術では造れないオーパーツとされており、太陽の光を謎の光に変える性質を持つとされています。この謎の光はメガリングのパワーアップに関連しており、ZAではメガ結晶という日時計と似た謎の結晶が登場します。
メガ結晶はメガエネルギーが溜まることで発生し、日時計と関連性が疑われますが、異なる部分も多いとされています。
2000年前~1000年前
AZは果てしない旅の中で、時の権力者にカロスを守る存在が欲しいと依頼され、プリズムタワーの内に秘められた装置「アンジュ」を造り出します。
プリズムタワーの装置「アンジュ」
アンジュは最終兵器から1000年後、ZAの時間軸から2000年前に造られました。
AZは最終兵器の反省から「奪うものであってはならない」と考え、永遠の命を持つフラエッテの力を皆に分け与えるものとして設計したと語っています。
これは、AZなりのフラエッテへの贖罪であり、平和な世が続いたため、動かす日は訪れませんでした。アンジュは内部にメガエネルギーを生成・内蔵する機能があり、メガシンカしたフラエッテが力を得ることで「アンジュフラエッテ」となるのが正しい姿とされます。
メガシンカ起源の矛盾とAZの認識
AZがメガフラエッテを前提としたアンジュを造ったのが2000年前である一方、メガレックウザによるメガシンカが確認されたのは1000年前とされています。
この1000年の差は矛盾を生じさせますが、AZはフラエッテのメガシンカとレックウザのメガシンカを別物として認識していた可能性があります。
レックウザが隕石由来、フラエッテがメガエネルギー由来であり、メガストーンの有無も異なるため、AZはこれらを異なる種類のメガシンカと捉えていたのかもしれません。ZAでは、AZがレックウザのメガシンカを目撃して以降、独自に調査し、その結果をクエーサー社に共有したと新たに言及されています。
1000年前〜300年前
AZの時代以降も、カロス地方では様々な歴史的出来事が起こります。
ゼルネアス・イベルタルの休眠
カロス地方の伝説のポケモンであるゼルネアスとイベルタルは、1000年周期で復活と休眠を繰り返す生態を持ちます。
800年前にはカロス地方に現れ、眠りについたとされています。ZAでは、これらのポケモンが「奪うもの」「与えるもの」と呼ばれ、プリズムタワーの暴走に反応してミアレシティに接近。
最終兵器に利用するため、フレア団によって2匹とも確保されたことが判明しました。これは『XY』で片方のみの確保だった点と異なる展開です。
パルファム宮殿の歴史的差異
カロス地方・コボクタウンにあるパルファム宮殿は、300年前の戦争後に当時の王によって建立されました。この王は3000年前のAZに倣い、カロス地方を治めたとされます。
ZAのミアレ美術館に展示されているパルファム宮殿の絵画は、『XY』にも登場しましたが、噴水の上に置かれたミニリュウを象った像がユクシーに代わっていたり、巨大な像にミジュマルやポカブ、チュリネが追加され、騎士が一人増えるなど、細部に差異が見られます。
これらの差異は、『ZA』のパルファム宮殿が『XY』とは異なる歴史を辿っている可能性を示唆しています。
5年前
『ZA』の物語は、『XY』本編で起こったフレア団事件から5年後の世界を舞台としています。
フレア団事件とフラダリの行方
5年前、『XY』本編でフレア団のボス・フラダリは、最終兵器を起動させ、フレア団以外の全てを消し去ろうとしました。
初期のフレア団、フラダリは人々が手を取り合うような美しい世界を目指していました。しかし、人の強欲さと愚かさににより、助け合うべき人たちに対して幻滅していくことになります。その結果、最終兵器を起動させようとすることになります。
『ZA』では、フラダリが最終兵器の鍵の所有者であるAZを確保し、プリズムタワー内の装置(アンジュ)の存在を知ったことが明かされています。フラダリはアンジュも起動させようとしましたが、フラエッテの所在が不明だったため断念。
最終兵器は不完全だったのか自爆し、フラダリはフレア団秘密基地と共に地中深く埋められることとなります。しかし、彼はジガルデに助けられ一命を取り留めました。この事件は、後のミアレシティ再開発計画の発端となります。
ジガルデが課した使命
最終兵器の光から周囲のポケモンたちを守り、力を失ったジガルデは、フラダリにジガルデ・セルを集める使命を課しました。
フラダリは最終兵器の影響で記憶を失い、AZと同じように長寿となっていました。主人公のカバンに忍び込んだセル以外の全てのセルを5年かけて集めました。力を失ったジガルデの一部は各地に渡り、その地の力を得つつ頼りになりそうな人間を探していました。
この動きには、Z技を模倣するためにアローラ地方へ行くことも含まれており、『サン・ムーン』や『ウルトラサン・ウルトラムーン』でジガルデのセルとコアが登場した謎が解明されました。ZAのジガルデはアローラの個体と同一個体と見られ、主人公がジガルデの探していた「頼りになる人間」であったことが示唆されています。
4年前~1年前
ZAに至るミアレ都市開発の背景
フレア団事件の影響による人口流出や風評被害を防ぐため、ミアレ都市開発が計画されました。
リスクの高さから引き受け手がない中、外資系企業クエーサー社が担当することになります。3年前にはクエーサー社の自社ビルが建設され、当初は人とポケモンが共生する街を目指す計画でした。
しかし2年前、AZがクエーサー社に「ミアレが泣いている」と伝え、プリズムタワーの調査で異常が発覚し、タワー自体がメガエネルギーを発していること、野生のポケモンがミアレに集まるようになったことが判明します。
タワーの暴走を止める最強のメガシンカ使いを探すため、AZの意向でZAロワイヤルが開催される運びとなりました。半年前には初めて暴走メガシンカしたポケモンが出現し、ガイ(タウニー)がAZと共にこれを鎮め、エムゼット団(MZ団)を結成して上位ランカーを目指すことになります。
現在
『ZA』本編開始
『ZA』本編が開始します。主人公がミアレシティに到着、ガイ(タウニー)に誘われてMZ団に入団し、上位ランカーを目指しつつ暴走メガシンカを鎮め、「アンジュ」を止めることとなっていきます。
本編のエンディング後
主人公がアンジュを止めたことを見届け、AZが逝去。
その後、フラダリは最終兵器の影響で3000年もの長寿となっているため、フラダリ自身の目的である「美しい世界を作る」ために世界を巡る、果てしなく長い旅に歩み出します。そう、AZと同じように…。
ポケモンシリーズ全体の時系列まとめ
『ZA』で判明した情報を含め、ポケモン本編シリーズの時系列は以下のように整理されます。
『Pokémon LEGENDS アルセウス』
LAは、数百年前のシンオウ地方を舞台とした作品であり、本編シリーズの時系列において最も古い時代に位置づけられます。
「ZA」のミアレ美術館にはヒスイの展示コーナーがあり、ラベン博士のスケッチの説明に15歳の少年が関わったとの記述は、LAの主人公を指すものと考えられます。
第一世代から第四世代
FRLG/ピカブイ → HGSS (3年)
『ハートゴールド・ソウルシルバー』(以下、HGSS)の公式サイトに「3年前にカントー地方で活動していた〜『ロケット団』が活動を再開した」と記載されており、FRLGからHGSSまで3年の時間経過が公式に明言されています。
ORAS ≒ FRLG
『オメガルビー・アルファサファイア』(以下、ORAS)のストーリー中に、FRLGで運航していたサントアンヌ号が世界を一周していると記されており、ORASとFRLGの時期が重なっていると考えられます。
HGSS ≒ DPt
『ダイヤモンド・パール・プラチナ』(以下、DPt)でジョウトのジムリーダー・ミカンがシンオウ地方のナギサシティに登場します。
これはミカンがシンオウのコンテストに出るために行っていたことがHGSSのイベントで語られており、HGSSの主人公が旅をしている間にミカンがDPtの主人公と出会い、ジョウトへ帰ってきたことが示唆されます。
HGSS/DPt → BW (数年)
HGSS/DPtと『ブラック・ホワイト』(以下、BW)の間の明確な年数は不明ですが、BWにシロナが登場しPtのギラティナについて語る点や、BW2にギンガ団解散後プラズマ団に入ったNPCがいる点などから、PtからBWへと繋がる流れが確認できます。
また、ORASにおいてBWで開発中の夢の研究がまだ終わっていないこと、BWで運航しているロイヤルイッシュ号がORASではまだ完成していないことから、ORAS→BWという繋がりも示唆されます。
第五世代から第七世代
BW → BW2 (2年)
『ブラック2・ホワイト2』(以下、BW2)はBWの2年後の正式続編であると公式に明言されています。
BW2 ≒ XY
出典: x.com
XYのテレビでBW2のPWTが中継されていることや、ウルップがハチクマンの映画を観て感動したという話など、BW2とXYの間には強い繋がりが確認でき、時期が重なっていると考えられます。
XY/BW2 → SM/USUM (2年)
『サン・ムーン』(以下、SM)および『ウルトラサン・ウルトラムーン』(以下、USUM)にはXYに登場したデクシオとジーナが登場し、XY主人公らのことを思い出しています。
また、SMに登場するプラズマ団のアクロマはBW2主人公に敗れた後であることが示唆され、イッシュ四天王のギーマは公式資料でBW2の2年後の姿と明言されているため、「XY/BW2 → SM/USUM (2年)」と思われます。
SM/USUM → ZA (3年)
上記の「XY→ZA 5年」という情報と、「XY/BW2→SM/USUM 2年」という情報から、SM/USUMからZAまで3年の時間経過があることが計算されます。
第八世代以降と『ZA』
SM/USUM → 剣盾 → SV → ZA
SMで「新時代のポケモン図鑑」として登場したロトム図鑑に対し、剣盾ではスマホロトムが普及しています。さらに、スマホロトムのカメラレンズの数が剣盾で1つ、SVで2つ、ZAで3つに増えていることが確認でき、技術の着実な進歩が示唆されます。
剣盾の博士であるソニアが執筆した本がSVのアカデミー内に所蔵されていることから、剣盾からSVへの時間経過が明らかです。
剣盾 → ZA
ZAのNPCがガラル地方のチャンピオンだったダンデが負けたと発言しており、これは剣盾の主人公がダンデに勝利した後の話と考えられます。
SV → ZA
ZAでは、SVのブルベリ学園のカキツバタとイッシュチャンピオンのアイリスのバトルを楽しみにしているNPCがいることから、SVよりも後の時間軸であることが示唆されます。
時系列の整理
これらの情報から、世界線を考慮しないシリーズ全体の時系列は、概ね以下のようになると考えられます。
作品 |
時間経過 |
|---|---|
LA |
数百年 |
FRLG(ピカブイ) |
|
ORAS(Em) |
|
HGSS(金銀ク) |
FRLGから3年後 |
DPt(BDSP) |
|
BW |
HGSS/DPtから3年? |
BW2 |
BWから2年後 |
XY |
|
SM/USUM |
BW2/XYから2年後 |
剣盾 |
SM/USUMから約1年後 |
SV |
剣盾から約1年後 |
ZA |
SVから約1年後 |
まとめ
『Pokémon LEGENDS Z-A』は、単なる『X・Y』の続編に留まらず、ポケモンシリーズ全体の壮大な時系列と深く結びつく作品です。並行世界の存在を前提とし、メガシンカの起源をホウエン地方と確定させることで、これまでのシリーズの歴史観を再構築しました。
ZAの物語は、『X・Y』の5年後という明確な時間軸を持ちながらも、異なる世界線に位置することで、独自の歴史と展開を描いています。3000年前のAZの戦争と最終兵器から、現代のミアレ都市開発と暴走メガシンカに至るまで、カロス地方の歴史が詳細に掘り下げられ、AZやF(フラダリ)、ジガルデといったキャラクターがシリーズ全体の物語において果たす役割が再定義されました。
『Pokémon LEGENDS Z-A』は、過去作との繋がりを深く持ちながらも、新たな解釈と展開を提示し、ポケモン世界の歴史と世界観をより豊かにする、非常に重要な作品であると言えるでしょう。




































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